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Archive for 3月 2014

NIN JAPAN TOUR 2014 - 2.26

というわけで二日目!

結論からいうと、僕は二日目の方がよかったです。一日目が点付けるなら95点で「ああもうお腹いっぱいだし、二日目どうしようかなあ」なんて思いもちょっとはあったんですが、二日目はまさかの120点でした。

なんでかって考えると、一日目はやっぱり比べてみると、ウォーミングアップ的な感じも確かにあったんですよ。オーバーヒート気味っていうか。空回りしそうな危うさっていうか。それが二日目はなくなっていて(あるいは軽減されていて)、バンドの熱量とフロアの熱量ががっぷり四つに組んだ感じだったんです。そのケミストリーに気おされて、二回くらいですかね、ホントに思わず泣きそうになりました(「Terrible Lie」や「Reptile」で眼がジンジンしてたのは何を隠そうワタクシです。って誰も気づいてねーよな)。

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事前に宣言していた?とおり、セットリストをガラリと変えてきた二日目。なんと新作『ヘジテイション・マークス』からはついに一曲も演奏されず! 思い切りましたねー。一曲もやらないってのもすごいなあ。代わりに一日目にはまったくやらなかった『FRAGILE』や『THE SLIP』(!)、そして『GHOSTS Ⅰ-Ⅳ』(!)から、緩急を織り交ぜた、すばらしいセットリストでした(まあ僕が一日目を見ているからそう思うだけかもしれないです。この日だけの人は物足りなかったかもしれませんが)。そしてもうツイッターで駆け巡っている情報ですが、トレントの妻であるマリクィーンがゲストとして登場(これは驚いた。事前にこれを予測していた人はいるだろうか)! その後、彼女とトレント、アティカス・ロスのプロジェクトであるHow To Destroy Angels(HtDA)の曲をカヴァー(本人がいるのにカヴァーってのもおかしいけど、NINとしてHtDAの曲を演ったわけだから、やっぱりカヴァーっていうのが適当なのだと思う)。

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アレさんの前座で演奏されたトラックは一日目と同じで、そこから「Somewhat Damaged」にスムースに移行(やっぱりメンバーはフラッと現れた)。このトラックって初めて聴いたとき相当ヘンテコな印象があったんだけど、もうこの十何年かの間にすっかりストレンジな感じは自分の中でなくなっていて、「懐かしい」トラックに様変わりしていた。でも初来日の頭(二曲目)、この曲だったのかあ。はあ、そこは覚えてなかった。『フラジャイル』の曲ってやっぱりあのぶっとい感じが印象的で、あの独特の硬さと重さはすごい好き。『THE DOWNWARD SPIRAL』(TDS)のささくれ立った、暴力的、背徳的な重さとはまた違っていて、すごく重いパンチ、みたいな。一音一音の主張が強くて、音が発せられるたびに、頭が揺れるみたいな。この重さを一発目に持ってくる辺り、すでに一日目とはモードが違うことの表れだったのかもしれない。

続いて「1,000,000」、「Letting You」と、『THE SLIP』から演奏するんだけど、シンプルなくせにやたらカッコいい。『THE SLIP』ってわりとガレージライクな、荒々しい肉体性、みたいな雰囲気があるけれど、それがそのままステージ上に現れていて、しかもそれは当たり前だけどNINのサウンドになっていて、流れの中に違和感なく埋め込まれている。フロアの反応も一日目とは違って格段によくて、次の「Terrible Lie」ではもうダイバーが出ていた記憶。明らかに熱量が異なっている。

その熱量の違いが伝わったのか、「March of the Pigs」を挟んだ「Piggy」では、トレントはステージ上からフロアにマイクを向けた。巻き起こる「nothing can stop me now」の大合唱。いやこの一体感。たまらん。やっぱり単純にトレントのルックスだけ見ても、『クロージャー』に収録されているライヴ映像とか、Woodstock '94 の頃の内向性っていうのはなくなっていて、彼は青白いモヤシっ子からムキムキマッチョマンに変貌を遂げ、それと合わせてパフォーマンス自体も健康的、健全なものになったように思うんですけれど(どっちがどうとかは言えない)、このフロアとの幸せな一体感っていうんですかね、これは今のNINでなければ出せない感覚でしょう。

『TDS』から『FRAGILE』の間にあったトレントの変化っていうのは、当時のファンにはけっこう衝撃的でした。BUZZの2000年3月号に載っていた、当時のキーボーディスト、チャーリー・クラウザーの言葉が忘れられない。TDSに伴うツアーの後、トレントに起きた変化を彼はこう伝えていた―

『トレントはなんと毎朝、
体鍛えて走ってジムに行くようになったんだ。
俺、あんなことが起こるとは夢にも思ってなかったね(笑)。
他のみんなも、
一緒に旅行してマウンテンバイクに乗ったりしてさ』(P.82)

―その変化が、今につながっていることは、言うまでもないでしょう。
(実際は『FRAGILE』の時点では、まだ精神的暗闇を抜け出せていなかったようですが)。

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僕みたいに、だんだん離れていっているファンの人もいると思います(いや、でもファンですよ)。それとは逆に、新しくファンになる人も増えているんじゃないかって、今回ライヴを観に行って、そう感じました。ちょっと興味があって「観に行ってみっか」的なノリだった人は、きっとファンになっちゃったんじゃないかなあ、そう思う。この二日目の帰り道、僕の耳にはすごく(マジですごく、だ)、好意的な意見しか聞こえてこなかった。

中盤の「The Frail」~「The Wretched」っていう、この日の静的パートは、バランスがすごくよい。ピアノ主体の小品「The Frail」が何に結びつくのかというドキドキ感、緊張感、それを静かに力強く開放する「The Wretched」のイントロ。続く「Vessel」が始まった時の、このビーム光線みたいなサウンドのカッコよさ。しびれる。かなりヘンテコなサウンドだと思うんだけど、この求心力! アレさんはさりげなくバチ?スティック?で何か叩いて金属的な冷たい音を演出している。終盤~アウトロで、アレさんが作り出すノイズとトレントの作りだすBleepyな電子音の絡みが、たっぷり続いたんだけど、あんなノイジーな絡みでもグルーヴを出してくるってのが、またカッコいい。あのパート、もっと聴きたかった。

この日も本編終盤は怒涛のように駆け抜けたんだけど、中に一曲、『GHOSTS Ⅰ-Ⅳ』からの曲「31 Ghosts IV」が入っていたのが特記事項。でも僕はまったく曲を覚えてなくて、こりゃあ新しいインストか何かと思ってしまったんだけど、あとでゴースト収録曲と聴いて、「あんなバキバキしたカッコいい曲あったけなあ」とアルバムをひっくり返した次第です。そしたらちゃんとありました。今改めて音源を聴くと見事にNIN印の素敵な曲で、なんでこれを覚えてないんだ自分と、はずかしくなってしまった。

僕は最後の「Hurt」までが本編かと思ってたんだけど、公式には「Head Like a Hole」までで、それ以降はアンコール扱いだったみたいです。「Head Like a Hole」のあとにトレントはけっこう長いことしゃべったけど、あんま聞き取れなかったな。まあ言われているように、「昨日も来た人はいる?」or「今日初めて来た人?」って聞いてたとこくらいはなんとなく分かりました。フロアの前の方を指して「この辺は昨日も見た顔があるな」ってちょっと面白そうに言ってたのが印象的。もっとこのフレンドリートーク聞きたかったけど、時間の都合もあるんでしょうね、そうそうにライヴは進行。ゲストが招き入れられました。それがトレントの妻、マリクィーン。思わず「おぉ!」と言ってしまった。

「Ice Age」と「BBB」を演奏してくれたんだけど、どちらも決して代表曲という感じではないんですよね(「BBB」なんて初作のEPにしか入ってないと思う)。僕の中では。そこが面白くもあったんだけど、ちょっと残念でもあり。やっぱり「How long?」や「The Space In Between」、「Keep it together」が聴きたかったなあ。曲はもちろんトレントが関わっているので、彼らしいものでしかないんだけど、マリクィーンがメインボーカルを取るだけで、 曲の印象はだいぶNINとは異なります。より静的な方向に傾くというのと、Ambientiveな聴き心地になります。夜っぽいとでもいえばいいのかな(「Ice Age」のライティングは素敵でした。深く青いライトが縦横にゆっくり動いて、深海のようなイメージだった)。曲調はNINみたいにメリハリをつけたパンチのある構造ではないので、そのことも関係していると思います。

NINのライヴでHtDAの曲が聴けるとは思わなかったし、それだけにフロアの反応が気になったんですが、僕が感じた限りは好意的な受け入れ方でした。歓声もあがったし、拍手もあったし、みなさんしっかり耳を傾けている印象だった。トレントがわき役に徹する、もしくはステージにいないという、そんなNINのライヴ自体がレアすぎて、そのことにも興奮してしまった。しかもこのスペシャルな演出はこの二日目にしか行われなかった様子! 僕がいけなかった三日目にはもっとすげえことやるんじゃないかって思ってたんだけど、特別なことはやらなかったみたいです(最終曲が「Head Like a Hole」だったってのは良いと思う。やっぱり盛り上がって終わりたいデスもんね)。

で、「BBB」が終わったら、妻の肩を抱いてラヴなオーラを出しながら、ステージからはけていったトレント、戻ってきて「サンキュー」と一言述べた後、「Hurt」を唄うっていうね(笑)。シチュエーション的にぜんぜん合ってないんですけど!!っていう。そういう隙っていうか、突っ込みどころがあるのも、またトレントの魅力なんじゃないかって思う。昔スタジオでの写真だったかな、うしろのキーボードかなんかにかけられたタオルの柄がダサすぎるってツッコミを食らっていたことを思い出しました(緑と黒のボーダーだった気がしますが、定かではありません)。

今回のライヴでは三日間を通じて「Closer」をやらなかったことが意外でしたが、これはやっぱり「All Time Low」がそれに取って代わってるってことなんでしょうね。だから「All Time Low」の終盤には「Closer」の断片を取り込んだり、しているんでしょう。僕の中では「Only」が第二の「Closer」だと思ってたんですが、違ったんかなあ。でも「Closer」は「Closer」だから、やっぱりやって欲しかったなあ。

というわけで、個人的には今まで見たNINのライヴでは、この2014年2月26日のスタジオ新木場コーストがベストでした(もちろんみなさま、それぞれ意見があるかとは思いますが)! ライヴアクトとしての、NINのすごさはいまだ健在でした。曲の良さと、音の良さと、演出(今回の場合ライティング)の良さ、これらが高いレベルで結びついて生まれるこのエネルギーったら。揺さぶられずにいる人の方が少ないでしょう。すごい! トレントもオッチャンだけど、まだまだ走ってほしい。また絶対観に行きますよ。ありがとうございました!!

公式ツイッタ―に上がったこの日の写真を以下に―



うひょー!

おしまい。

この日のセットリストはこちら