17歳とベルリンの壁presents Seventeen Front vol.2 - 2nd Mini Album "Reflect" Release Party - (2017.04.08)


音源ひとつも持っていないバンドを目当てにライブに行くというのは、はじめてだったかもしれない。

直接的なきっかけは、SoundCloudで流れてきた『Reflect』のTrailerだった。





そこに傑作の予感を感じた僕は、ライブの予定を見、そこに「死んだ僕の彼女」の名前を見つけ、これは堪らんと、その足で(というかその勢いで)ライブの予約をした。

そして4月5日リリースのそのミニアルバムを時間的に手にする余裕もないままに、ライブに赴いた。

会場は渋谷club乙(きのと)。

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1番手の(というバンド名です)は、ミュージック・ビデオなんか見ると、もっと大人っぽく見えるんだけど、実際見るとすごく若い印象です。細かいギターアルペジオとか、独特の浮遊感・脱力感あるボーカルとか、いい意味でユニークなグルーヴ、それからUSインディな匂いをビデオからは感じていたんですが(そういえばギターのあまの氏はLDOAのTシャツ着てたような? LDOAはアメリカじゃないけど)、ライブは全然エモーショナルで雰囲気違いましたね。緊張なのか何なのか、ギター/ヴォーカルのふせだ氏のこんがらがったトークが面白かったですね。カヴァーをやると言った後に、「はっぴぃえんどというバンドの―」っていうから「おぉ」と思ったのもつかの間、「17歳とベルリンの壁っていう曲…いや、ん?」と首をひねり、「17歳とベルリンの壁の!ハッピーエンド…ってみんなここにいる人は分かるよね?あの、スタジオの、あれ」とか言って曲に入っちゃいましたけど、何が「分かる」んでしょうか!? そこが知りたい。…いやあれでしょ?YouTubeにあるスタジオライブの曲ってことだとは思いますが…笑。

やっぱり「ジャズとペプシ」がよかったですね。空気を変えた「告白」もよかったけど。 





にしてもふせだ氏のこのふんわりアフロと丸メガネ、そしてにこやかな表情、自分の知ってる誰かに似ている気がするのだが、思い出せない。そして忘れる。あとドラムのたばたちゃんがずっとニコニコで素敵。

歌詞に「ナンバーガール」って入ってる曲があったと思うけど、今更だけどそうナンバーガールも、もうそういうポジションなんだな、オレど真ん中だったけど、オレも年喰ったんだなって思った次第。


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二番手のBalloon at dawnは予想していたのと全然違った。いいとか悪いとかじゃなくて。違った。「Our Blue」とか見て、勝手にもっとチルウェイブ、シンセポップなバンドかと思ってたら、全然バンドサウンドだった。シンセがなかった?いえ、あったとしてもほとんど耳に残っていない、ってことも関係あるのでしょうか。ドラムがフラットでダンサブルな調子なのは、確かにそういった音楽の傾向を感じさせる。踊りやすいです。体が自然に動く。歌詞は感傷的だったりするんですが…。井口氏のボーカルはいいですね。声とかそういうことよりも、この歌をきちんと聞かせようとする、丁寧さと言いますか、出演バンドの中でいっとう歌詞が聴き取りやすかったです。始めはちょっと斜に構えてる感じなのかなとか思ってこっちが斜に構えましたが、スイマセン勘違いでした!





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三番手のchiio(チイオ)は一番得体のしれない感じでした。キャラクターを掴ませないといいますか。もろにメロディで聴かせるというわけではないんですが、歌とメロディがあって、どこか懐かしい感じもあったりして、佇まいは極めておとなしいのですけれど、かと思ったらメタリックなゴリゴリとしたギターをさく裂させて、衝動性を感じさせる。ボーカル/ギターの中村氏の朴訥とした雰囲気とのギャップもあるんでしょうか、なんだか不思議なイメージです。今現在、音源のほとんどがCDではなくてカセットテープや7インチでリリースされているところにも、強いこだわりを感じる。僕は音源を持ってないし今回のライブに合わせて予習もしてなかったので素直に観てましたが、音源から入った人は、ライブ観るとちょっとビックリするかもしれませんね。





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現存するジャパニーズ・シューゲイザーとしては知名度が高いと思われる「死んだ僕の彼女」が4番手。僕も『2songs + Cassette Tape E.P / 6songs From The Happy Valley』からこっちの作品は多分持ってる(多分)。今まで観る機会を逃していたけれど、ファンです。

「Yurikago Kara Hakaba Made」とか、ライブだとギターがどうこうで云々カンヌンという言葉を見た気がしたので、やらないんだろうなあと思ってたんですが(僕はあの曲の後半のドラムが大好きなのです)、初っ端からかましてくれて、大興奮でした。ギター/ボーカルの石川氏はいつもどおり目元に黒いラインを入れて、これでもかと細かくヘッドバンギングしながらギターを掻きむしる。1曲目で早くも汗だくです。でも思ったよりもギターの音が控えめで、もっと轟音で来るかと思ってたから意外。逆にシンセの音がでかくて、確かにシューゲイズの意匠なんだけれど、なんだか不思議な佇まい(動きまくる石川氏の隣で不動の出田[いでた]氏、という構図もその感覚を生み出すのに手伝っているでしょう)。

ボーカル/シンセの出田氏の歌声なんですが、僕はいつからか疑問に思ってたんですよ、なんでこんな楽しそうな歌声なんだろうと。「笑」が含まれているように感じられて、バンドの世界観に反しているんじゃないかと。『Underdrawing For Three Forms Of Unhappiness At The State Of Existence』からこっち、特にその感覚が自分の中で強くなっていて、初期の頃の無感情なトーンが好きだったなあ、なんて思ってたんですが、この奇妙な佇まいの中で気づきましたよ僕は、いや気づいたというか納得いきましたよ。歌声の誤解。このある種チャイルディッシュという言葉にも通じる、ヘブンリーなタッチ。エンジェリックというとまた語弊があるけれど、甘さと紙一重の死線の存在。ノスタルジアと死。これが逆にバンドの世界観になくてはならないものなのかもしれない。いやきっとそうだ。

ファンとか言っておきながら、「My Piggish Girl Died Miserably(惨めに死んだ豚の彼女)」に一瞬ピンとこなかった僕を許してください。ドゥーミィでアンビエントな空気も内包した、重くスローでヘビーな1曲はバンドの真骨頂といってもよいでしょうか。そこから続く「吐く息 (The Last Stage Of Change At The Deceased Remains)」がまた良くて。音源だとラストに歌声がノイズの波に飲み込まれていくんですが。ライブでもやってくれました。こういう感じのノイズって生で体験したことなかったので、新感覚でこれまた興奮しました。壁というよりはシャワー。ノイズに包まれる浮遊感。圧迫感。思わず目を閉じると感じられる不思議な包容力。けっこう長いこと続くんですが、やがてそのシャワーがアンビエントな聴き心地になってくるから不思議です。

17歳とベルリンの壁の鶴田氏と、死んだ僕の彼女の石川氏は昔家が近かったそうで、そのころの思い出話は貴重でした(笑)。

あと欲を言えば、「Sweet Days And Her Last Kiss」が聴きたかった! あともっとデカいステージで観てみたい。








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トリはもちろん17歳とベルリンの壁。やっぱり目当てのお客さんも多いんでしょうねえ、転換中に「みなさん一歩ずつ奥に詰めてください」と繰り返されるアナウンス。「すべて17歳とベルリンの壁の鶴田くんの伝言です。できるだけたくさんの人たちに自分たちの姿を見てほしいと言っています」って言いぐさが面白かったですね。

この日は夕凪に沈むのクラシマ氏を迎えてのトリプルギターにドラムにベースという5人編成(場合によってはツインギターにシンセ)。

何がどうってうまく言えないんですけれど、音がいいですね。いや実際いいかどうかは分からないんですけれど、僕の好みです。ドラムの抜けが良いのとギターが尖(とん)がってていい。トリプルギターって音聞き分けられるかなあってちょっと不安だったんですが、この絶妙な編みこみ感。これ聴いてるだけでも気持ち良い。やっぱりギターの音好きだなあと改めて実感です。

冒頭に書いたようにSoundCloudの新作トレイラーだけで気になって、音源ひとつも持たずに、YouTube等で予習の上ライブに挑み、そして音源購入して帰ってきたわけですが、当たり前と言うべきかどうか、動画よりも音源よりもライブの方が100万倍(って言い過ぎかなあ笑)、よかったですね。ギターがギャーン、ゴワーンと鳴って、ボッソリひっそり歌うっていう、曲によってはドがつくくらいシューゲイズな佇まいなんだけど、音がこもってない感じがすごいいいです。メロディも生きてるし(歌詞が頭にないと聴き取りづらいのはあるけれど。「肺刺す憂いと意地を/淀み吐くと癒えるさ」とかは流石に聞き取れない!)、全体としてのベクトルはやっぱりポップで、すごく聴きやすい。

2年ぶりの新作『Reflect』は前作に比べてよりシューゲイズに近づいているというか、歌が後ろに引っこんでいる―ギターが前に出ている印象が強いんだけど、僕は歌がある曲はやっぱり歌詞を聴きたいんで、歌声を前に出してほしいです。今初めて歌詞を見ながら聴いているんだけれど、韻を踏んだり語呂合わせだったり、イメージというか、一定の傾向性はありつつも、言葉遊び的な要素が強いのかなあ、そんなに言いたいこともないのかなあと感じているのですが、どうなんでしょうか。あえて世界観を固定されないようにしている、それもキャラクターなのかもしれませんが、このキラキラとした素敵なサウンドに、歌詞による確かな世界観が構築されれば…って考えたけど、やっぱりこの形がよいのかもしれませんね(曖昧)。でも「一人バスに揺られて/ひどいハッピーエンドで」って歌詞は好き。「ひどい」と「ハッピーエンド」って普通くっつかないよな。

一番手の渦と二番手のBalloon at dawnがそれぞれカバーをやっていたので、ここで聴くのが2回目って曲もあって(あんまこういうのないですよね)、一粒で何回もおいしいみたいなお得な展開も。あと紅一点ベース/ボーカルの高野ちゃんが思ったよりもずっと小っちゃくてキュートでした。ボブ。すっとぼけたふんわりトークも味わい深い。

次は是非フルアルバムを。というかくるでしょう、そろそろ。2年とあけずに。いや来年くらいに。この日のライブで確実にファンを増やしましたよ。一人はここに。僕。

YouTubeのぞくとライブ映像沢山あるけれど、そのどれよりも生の方が良いと思います! 


まあひとつ心残りがあるとすればカレー食っておけばよかったな…っていう…。


おつかれさまでした。





…もしかしてKensei Ogataさん来てたのかなあ。いや…来てたから何だって話なんだけど…別に知り合いでもなんでもないし…ただ、『Her Paperback』が好きなんです…。



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