17歳とベルリンの壁 presents Seventeen Front vol.3 @ 渋谷club乙-kinoto-


2018年9月1日。

この日は17歳とベルリンの壁の自主企画イベント『Seventeen Front』のVol.3を観に、渋谷はクラブ乙(きのと)へ行ってきました。

17歳とベルリンの壁、と、滋賀出身のバンド「揺らぎ」、この2組が同日に新作をリリースしたことを記念しての、2バンドが共演するレコ発、リリースパーティでした。

オープニングアクトはThe Waterfalls

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18時の開演時間をわずかに押して、ポストパンクなサウンドに乗って登場したThe Waterfalls。

1曲目はインストだったと思うんですが、ゴリッとか、パキッとかいう擬音が似合いそうな、乾いたサウンド。メタリック、という言葉も頭に浮かびます。でも歌が入ってくると、紅一点ギター/ボーカルの輪湖真緒さん(小柄ですよね)の声が、その金属的なサウンドの中でスコーンと抜ける感じで、聴いていて、すごく気持ちよい。

「シューゲイズだ」って自分たちでカテゴライズしているわけではないんでしょうが、観ている方としては何となくではありますが、そういう頭で観ているもんですから、その「シューゲイズ感」をハズしてきているように感じられた部分があって、そこがやっぱり印象に残ってます。それは、にじみ出るロックな心意気といいますか、暴力性(というと言い過ぎだとは思いますが)、「あれなんかエモーショナル」だなって思った部分があって、それがいわゆるシューゲイズ的なカタルシス(ドローンやノイズによる酩酊感、包容力)とは違う興奮があって、よい意味で意外でした。そうそう、human stationというバンドが2000年にリリースした『sound asleep...』という作品があるんですが、なぜかソレを思い出したりしてました。男女ツインボーカルで、シューゲイズな音像で、でもちょっとヤサグレ感っていうんですかね、やけっぱちな衝動性みたいのが、ときおり顔をのぞかせてくるっていう、そんな雰囲気が僕の中で重なったのだと思います。おそらく。あとアグレッシブかつどこか楽しそう、っていうね。鋭角的なサウンドでありながら、どこかしらホッコリする。ギターポップ的な爽やかさというか。輪湖さんのボーカルによるところが大きいのかな。






こちらは2018年1月のライブ。撮影/編集は、自身もバンドマンであり映像作家の皆様ズパラダイス氏と、Yusei Tsuruta氏(17歳とベルリンの壁)が担当した、とのこと。

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続いての登場は揺らぎ。今回の共同レコ発は関西と関東で行われていて、こちら関東は17歳とベルリンの壁が主催、関西は揺らぎが主催という構造になっているようです。

揺らぎについては、うーん、なんとなく音のバランスを欠いていたように感じてしまって、終始その印象が拭えませんでした(正直な感想なのです)。音がデカめなのは別によいんですが、デカければよいってもんでもなくて。ギター/ボーカルの「みらこ」ことmirai akitaさんがせっかくよい声してるのに、埋もれちゃって、全然聴こえてこなくて。そういうスタイルっていわれたら受け入れるしかないんですけれど…。だからザゼンボーイズのカバーで「KIMOCHI」を演ったときは、声がフワッと浮かび上がってきてね、すごくよい按配だったんですよ。もったいないなあって、すごく思いました。シューゲイズから派生するアンビエント~ドゥーミィな気配も孕みつつ、そこに幻想的なみらこさんの歌声とメロディが入ることで発生する異空間(それは甘く美しいような、悲しいような、怖いような)というのが、揺らぎの真骨頂だと僕は思ったのですが、この日はメロディを感じることなく、ギャリギャリゴォワァ~ンで閉じてしまったような。

でもアツいファンの人もついてますし、本領発揮したらこんなもんじゃないと思うので、次回に期待!





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トリはもちろん17歳とベルリンの壁。

これがもう素晴らしくて。1曲目の音が鳴った瞬間から背筋が伸びた。音がスゲー良いんですよ。前にも書きましたけど、2本のギターの編みこみ感とか、ドラムの音の抜け具合とか、すごい好きなバランス。うわーこれヤバいなあって、絶対よいライブになるって、直感しました。

本当に正直に言うと、彼らの3枚目の作品は、僕の中にまだ落とし込めてなかったんですよ、このとき。1stや2ndの方が、ぜんぜん良いんじゃないかって思ってたし、その理由ってなんだろうって考えたときに、バックサウンドとボーカルが乖離しているというか、一緒になってないような、変な違和感があったんです。再生するこっちの問題なのか、そういう作りなのか、よく分かりませんが、何か違和感あるなってずっと思ってて。この日の1曲目は3rdの頭にある「展望」だったんですが、ボーカルが入るまでドキドキしてたわけですよ。音のバランスはめっちゃよくて、でも「あの違和感」がここでも再現されたらどうしようって思って、ハラハラしながら待ったわけですが―

スゲーよかったです! ツルタくんのボーカル。

めっちゃ声出てるし、でも楽器の音からも乖離せず、見事に一緒くたになって聴こえてくる。演奏も綺麗に鳴ってるんだけど、歌声がド真ん中に来てるような聴こえ方で、なんだかんだ言ってもポップミュージックが好きな僕は、すごく安心するバランス感。それを感じた瞬間、鳥肌立ちましたよ、マジで。今日来てホント良かったって思ったし。

そのバランス感で鳴らされる3rdの楽曲たちは、がぜん僕の中で輝きだして、新たな魅力を獲得したのです。そして僕の留飲が下がったのです。

途中―

「カバーをやります―」とツルタくん。

「この間、京都行ったんで」と、これは揺らぎとのライブのことでしょう。

京都、カバー、17歳とベルリンの壁、とくれば?

と思った瞬間鳴らされた、力強いギターフレーズは、

くるりの「ワンダーフォーゲル」! 

ハマる。キラキラのドライブ感。セットリストの中でぜんぜん違和感ない。

ベースタカノちゃんの「自分たちの曲より疲れる」というホッコリ発言もあり、

ツルタくんの「岸田繁のコードがムカっつくんすよねぇ…」という悔しそうな発言もあり、
(フロアからお知り合いでしょうか、「何言ってんだ笑」ってツッコミもあり)、

そんなツルタくんが友人の結婚式に行ったとき、新郎新婦の入場時この「ワンダーフォーゲル」が流れてきて、「ん、この歌詞は、どう、なんだ…?」と思った話も面白い。見事にフロアの笑いも獲得。

なんかMCも板についてきた感が…笑。

ボーカルに力を感じたということもあるんでしょうか、今回のライブ、全体的に熱量高目な印象で、みなぎる気合がヒシヒシと伝わってきました。普通新しい音源に伴うライブって、だいたい(新作からの曲は)音源に負けるといいますか、やはりこなれていない印象があったりすると思うんですが、このライブはぜんぜん音源を超えてきました。そこもビックリした。ぜんぜんライブの方がよいです。って気づけば前のライブにも同じこと書いてますが、音源もよいんですが、ライブの方が100万倍よいので、気になってる人で、ライブ行ける人は、絶対観に行った方が吉。

どんなにハイテク化が進んでも、人対人の「生」って絶対なくならないと思うし、だからライブシーンってアナログかもしれないけど、規模は縮小しても絶対なくならないと思うんです。代わりになるものはない、同じものは二度とない、「ライブ」という刹那の衝撃。その「生」というか「ライブ」の醍醐味を感じられた素晴らしいライブでした。100点満点をつけてしまうと、伸びしろがなくなってしまいますが、でも100点満点です! 

個人的ハイライトは2か所。ひとつは本編ラストの「地上の花」~「プリズム」の流れ。「地上の花」が「プリズム」のフリになっているような、ミドルテンポの「地上の花」で溜めて溜めて一気に「プリズム」ではじけるという、得も言われぬカタルシス。間違いなく「プリズム」はマスターピース。

もうひとつはアンコール前のMC、ドラムミヤザワくんのちょっと感動的な挨拶。ウルッとした。そして(ここだったか覚えてないんですが)、ツルタくんが今後の活動に言及するわけですが、なんと「すでに新曲を作り始めているし」、「次のアルバムはもちろん、次の次のアルバムを見据えた活動をしていく」という頼もしい発言。ライブを観ても感じたことですが、間違いなく今ノってるんだろうなってことが分かる、力強い所信表明でした。

もっともっと人気出るだろうなって思いますし、出ない方がおかしいと思わされる素晴らしいライブでした。本当に素敵なバンドさんです! 今後も応援してます。

ありがとうございました! みなさんお疲れ様でした。


ラストが「ハッピーエンド」ってのが、いいよね。




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