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Archive for 2013

2013 メモリアル

2013年の音楽に関するおぼえがき(もちろん個人的な)。

メインのブログはフリーの音源に限りたいし、そっちで取り上げたモノに関してのまとめとかやる気もないので、こちらのブログに書いています。なので、フリーに限りませんが、2013年、印象深かった音などを、ここで記しておきます。

特に2013年にリリースされたものには限りません。改めて聴き返した作品もあります。あくまで、今年をふりかえったときに、印象深かったものを。

ベスト・オブ…、というものではありません。順不同。あるいは思い出した順。


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きのこ帝国 - 海と花束 (MV)

≫ フォークをエッセンスにした情念系オルタナティヴというイメージを脱ぎ捨てにかかったような、シューゲイズな曲。正直今まであまりピンときていなかったのですが、この1曲で、彼らに対するアンテナが敏感になりました。MVの中で、途中で現れてくる朝焼けの海がとてもきれいです。


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水曜日のカンパネラ『マリー・アントワネット』

≫ 水曜日のカンパネラは、主演・歌唱のコムアイを核として、サウンド・プロデュースにKenmochi Hidefumi(!)などが参加しているグループ、といってよいんでしょうか。エレクトロニックなトラックに、言葉の響きから直感的にはじき出されたような、文脈のない言葉たちをラップ調に乗せていく。曲としてのよさというよりは、パフォーマンスとしての面白さに惹かれました。他の曲でも、MVと一緒に聴いた方がだんぜんよいです。音楽はひとつの手段にしかすぎなくて、これだけで何かを表現しようという人ではないと思うので、パフォーマーという方が相応しいのかもしれない(そのうち音楽とは違う方向に行きそうな気配を感じるんですなあ)。他の曲では『ブルータス』もスキです。


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syrup16g - タクシードライバー・ブラインドネス

≫ モニターの前でホントに「思わず」声を上げたのは、五十嵐隆の生還ライヴの告知を見たときだった。物事が起こるタイミングというヤツはとても重要で、彼らが活動していた期間は、私にとってのしごくパーソナルで特別だった期間と、図らずも結びついている。だから、私が彼らのファンであり続けているのは、単純にそのタイミングのせいなのかもしれない。生還ライヴのライヴレポートみたいなものも書いてみたりした。そのあと彼五十嵐隆が出演したイベントにはちょっといけなかったけど、でもこうやって、定期的に(ちょっと間が空きすぎだけれど)ファンの前に出てきてくれるのは、すごくすごくうれしい。彼が「動いた」というのが、私にとって2013年一番の音楽ニュースかもしれない。その重要さとは裏腹に、あまりおおっぴらに書くことではないという意識が、自分の中では強いんですけれど。


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Anzo Music - Castlevania - Bloody Tears (Anzo Cover)

≫ 悪魔城ドラキュラシリーズの大名曲「Bloody Tears」のカヴァーというかリミックスです。ハウス仕様なんですが、原曲のあのフレーズをいつ使うんだろうって思わせながら、長いこと引っ張ります。シンセでもってそのラインを奏でられたときに立ち上がる幻想性は、確実にゲームの世界観とシンクロしている(特にSFC版の『悪魔城ドラキュラ』辺りか)。うまい。なかなかこういった、一歩引いた形のカヴァーなりリミックスを聴いたことがなかった(だいたいみなさんアグレッシヴな方向に行く)ので、新鮮でした。


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tsubonekoko - Parachute Limit(TBK D&B Remix)-PSY・S

≫ PSY・Sがとっくの昔に時代を飛び越えていたことを再確認させてくれました。ベスト盤買おうと思ってずっと買ってない…。


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≫ ケープタウンのトラックメイカー。栗山千明の肖像に、「Playstation」というワードが心くすぐります。1月にEPをリリース予定らしいので、密かに楽しみにしています。「suicidehearts」なんかを聴いても感じますが、POP志向な気配。ドリーミィなシンセサウンドの中で、ささくれだった音を上手にアクセントにしています。サイバーネイション・ドール、あるいはネオンの思い出。


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emoji_muzik - РОЦЯ М£ ΔПΟ†Н£Я

≫ 素性を存じ上げないんですが、出会ってから、1日何回も聴いています。すごくスキ。もし今年聴いたトラックのベスト5とか選んだら必ずやランクインするでしょう。元ネタがありそうにも感じられるんですが、結局分からず。


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noiyuhi - MajiでKoiするAre You Gonna Be My Girl

≫ JET広末。マッシュアップ。このヤケクソ的なパワーが頼もしすぎます。後半はどっちの曲だか分からないほどのカオスに。


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Perfume - Sweet Refrain

≫ ヘビー・ローテーションでした。聴くたびに新たな音が聴こえてくる面白さ、そしてそれがまた気持ちよく感ぜられる聴き心地のよさ。よいです。


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Color Filter - 『I Often Think In Music』

≫ ツネヨシリュウジさんを核にしたユニット、Color Filterのアルバム。思いついたように聴き返してました。ふと見たら1999年リリース! そんなに経ってるとは衝撃。これ以降、打ち込み色を前面に出したスタイルは急激に影をひそめ、アコースティック・サウンドで空間処理を意識した音作りにシフトしていきました。このころが一番好きだった。そして最近のツネヨシさんはTwilight Setで活動中。


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Substance - 『Subsistence』

≫ アルバム『Subsistence』。これも2007年ですか。よく聴き返しました。前から止まったり動いたりを繰り返してたんだけど、ついにウェブサイトがなくなってしまった。「なくなったときは終わったと思ってください」みたいなことを前に書いていたので、たぶん終わってしまったんだと思います。残念です。下に1曲。



Substance - Downer


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sunday morning bell - 『wonderland』

≫ 京都のバンドsunday morning bellの1stアルバム。2011年。こちらもよく聴きました。名盤だと思います。1回だけライヴを拝見したことがありますが、また見たいです。新作、待ってます!


sunday morning bell 『wonderland』 CM


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Silent Alliance - 『The Spirit of an Age to Come』

≫ UKのバンド、Silent Allianceの1st。PCに入れて聴いてました。2008年ですか。活動はしているようなんだけれど、リリースがないんですよね…。次を出してくれ!


Silent Alliance - Cities On Fire


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クリトリック・リス - そのとき俺は 2011.6.3

≫ 誰かの恋物語の裏にある、「俺」のドラマ。口ずさんじゃうなあ。


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Nine Inch Nails - Came Back Haunted

≫ まさかのカムバック。デヴィッド・リンチが監督したヴァージョンよりこっちのPVのがスキです。でもまだアルバム買ってない! 許してトレント。感想はそれを聴いてから書きたいです。


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泉まくら - 『candle』 pro.nagaco

≫ この曲が収録されたアルバムもサイン入りで手に入れたんですが(前作がすごくスキで、勢いづいたもんで)、全体的にどことなくスタイルを画策している節が感じられました。やっぱり'balloon'のイメージが強いんでしょう。冬の澄んだ空気にふとした拍子に舞う、シャンプーの香りのような、匿名性と切なさ。それを保ち続けるか、否か。次とかその次あたりにスゴイ奴をドロップしてきそうな予感。応援してます。


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レイト - 君を愛す

≫ 5年ぶりのアルバムから。まだ聴けてない。聴かなきゃなあ。このトラックを生み出すのはすごく大変だったんじゃないかなあと思います。これまで顔を出さなかった彼が真正面から向かってきたこのジャケットにも、意志の強さが見てとれる。ってか男前だなあ。


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禁断の多数決 - 「トゥナイト、トゥナイト」

≫ デジタルの中に滲むアナログ。新しさと古さ。ジャパニーズとインターネット、ディスコとハウスとポスト・パンクとオルタナティヴ、女の子と性的イメージ、そしてサイケデリアと透明感。玉ねぎの皮をむいていくような、核の見えない道程。要は非常な多層、あるいは多面体。そこにあるサークル感というか、劇団感はちょっとだけ私を遠ざけるけれど、でもすごくよいです。parkgolfが行った、彼らの"透明感"に対するリミックスも、骨抜き感がクールでした。


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柴田聡子【二人の間には】【あさはか!】2011/11/7 下北沢カラードジャム

≫ これしかない感というか、不器用そうな、一途な感じがツボに入りました。望んでかどうか分かりませんが、ポジションがあまりにもサブカルすぎるように思えて、そこがもったいないような。山本精一と岡田徹(ムーンライダーズ)と伊藤俊治によるユニット、ya-to-iに詞を提供しているようですが、その曲'sumica'のヴォーカルは彼女なんだろか。電子的なトラックに乗る、無機質な声は、またぜんぜんイメージが違います。


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p0ru417 - 少年期 (宇宙小戦争Remix)

≫ うひょー。


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TEMPURA KIDZ - CIDER CIDER

≫ 元きゃりーぱみゅぱみゅのバックダンサーを務めていた子供たち。なんだかんだでコチラと次の「ONE STEP」はよく聴きました。スペシャのきゃりーの番組に出たときの、しゃべりのあまりのたどたどしさが、印象に残っています。最近のビデオだと、唯一人の男メンバー、P→★がデカくなってきてる気配。


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DyE - Fantasy - Official Video

≫ たまに無性に見たくなるMVってあると思うんですが、コレはそのひとつ。4000万超再生されてるようなので見た人すげーいるんだろうなあ。でも最近見返したもんで、記しておきます。まさに超展開。思春期のたわむれが容赦ない恐怖に彩られます。クトゥルフっぽいのかなあ。詳しくないから分からないんですけれど。続きが見たい。あとたまにふと見たくなるシリーズとしてはKen Ishiiの「Extra」や、元気ロケッツ(そういえばLumi役の安田レイさんがソロデビューしたなぁ)の「Heavenly Star」などが。


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Eyeliner - 『LARP of Luxury』 (CC) by - sa 3.0

≫ パッと聴き、ファッション的にはVaporWaveやPost-Internetの流れなんだろうけれど、実際のところはEBMやPost-Punkのアップデートなんではないかと思う。その身にまとい方、在り様自体がラグジュアリーというか。まあ、ガタガタいっても結局はPOPなんですけどね。Post-Pop。Crystal Magic Recordsからのリリース。




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my dead girlfriend/少女スキップ - 『sweet days and her last kiss』

≫ 死んだ僕の彼女(my dead girlfriend)と少女スキップのスプリット。非常によく聴きました。特に「sweet days and her last kiss」と「umbrella」。死んだ僕の彼女は、以降とはちょっとサウンドが違うように思うけれど、このあとの作品にある「12GATSU, POOLSIDE, UKABU SHITAI」と「ヴァンデミエールの頭」もよく聴きました。というかこれからも聴くと思います。


死んだ僕の彼女 - sweet days and her last kiss

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少女スキップ - umbrella

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死んだ僕の彼女 - 12GATSU, POOLSIDE, UKABU SHITAI


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MEISHI SMILE- KISS [PV]

≫ これは記事にも書いたのでいうことなし! すばらしい!


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(((さらうんど))) - きみは New Age (Music Video)

≫ 作曲はメンバーのCrystalと、砂原良徳。シティ・ポップ的な80s感と、透明感・浮遊感のあるダンスサウンドの融合は、確実にnetlabel/netaudioのシーンともリンクする。敏感に時代をとらえた、そんなトラックのタイトルが「きみはNew Age」なんて、キマりすぎていて、すでにエバーグリーンな輝き。ちなみに踊っているキュートなガールは我妻三輪子(わがつま・みわこ)さん。「俺たちに明日はないッス」に出てたなあ!


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転校生 - エンドロール

≫ 2013年9月末のライヴでもって「休学」(活動休止)となった転校生こと水本夏絵。2012年5月に1stアルバムをリリース、その直前にはMaltine Records(!)からもリミックス作がリリースされたりと、今後の活動に期待していたのですが、あまりにも早い活動休止の報告に驚きました。報告の数日前にされたツイート―「これは反抗でも衝動でもない。私は私の意思でやらなければならない。嫌いなものを嫌いと言うことが悪とされるなら、現実なんて生きたくない。どうせ誤解されて決めつけられるのだから、せめて嘘ではなく本当のことを言って死にたいって思った。いい子になれなくて本当にごめんなさい。」は本人のものだったんだろうか。結局すべては憶測だけれど、やりたくないことをやってたんだろうか。わからない。わからないけれど、作品は残り続けるし、私はそれを繰り返し聴くだろう。ありがとうの気持ちを込めて、最後に、エンドロール。


空似

マンソン閣下と、進撃の巨人第12巻のカバーにある巨人さん(読んでないからよく知らない)の髪型が奇妙な一致。流行に敏感なマンソン氏であった(適当)。




Lumenが何だか凄かった。

お久しぶりです。こちらのブログはかなり不定期になってます。でも気にしません。

最近ふとしたことからLumenというフリーゲームに出会って、あまりのクオリティに驚きました。

海外の物ですが、Thousand Cranes Studioが制作したということ以外、細かい情報はよく分かりません。調べてもいないんですが…。英語力がないせいです。

ゲームも全編英語のようです。セッティングである程度言語が選べるようですが、日本語は基本設定にありません。

ゲームの目的は悪夢からの脱出です。プレーヤーは主人公の女の子(かな?男の子かもしれない)になって、夢の世界をさまよいます。

この夢の世界がすごい綺麗。どういう描写の仕方をしているのかも、これまた分かりませんが、とにかく美しい。言葉でいうより、まずは下の動画を見てみましょう。



これですよ。すごいですね。こんなふうに立体に描かれた世界の中をグリグリと動き回れるんですよ! マウスでもって視点を動かせるようになっているので、前後左右だけでなく、360度ぐるりを眺めまわすことが可能(つまり空もきちんと描かれているのです)。主人公がカメラもってるもんだから、初めは自由に風景写真撮ってあとで眺めたりできるのかなと思ったら(それぐらい景色が美しい)、違ったみたいです。カメラは要所にある仕掛けを動かし、話を先に進めるためのアイテムでした。ポイントポイントで、ナレーションでヒントが流れるんです(これも英語)。それにしたがって、写真を撮って、その写真に対していろいろアクションをすると、目の前の世界で何がしかの反応が起きるという理屈。

ステージ制になっていて、3ステージで終わりのよう。最後は選択を迫られるだけなので、実質2ステージをクリアすれば、終了(だと思います)。ちょっとボリュームには欠けますが、素晴らしい出来です。そう、ちょっとボリュームには欠けるけれど、初プレイでクリアできるほどには簡単なゲームではありません。対応するゲームパッドがあれば別かもしれませんが、キーボード操作でのゲームプレイに慣れていないと、アクション部分でちょっと苦戦するかもしれません。ジャンプしたりダッシュしたりがあるんです。敵に見つかって追っかけられると、ドキドキします。一撃でやられてしまうので。

何をどうすれば仕掛けが動くのか、先に進めるのか、という部分はさほど難しくないので、頭をひねることはないかと思います。

気になった方は是非プレイしてみてください。初めのステージをプレイしてみるだけでも、このゲームの美しさが分かると思います。ナイツとか思い出しましたね。このグラフィックといい、悪夢という世界設定といい。ホント写真撮りまくって、保存できればよかったなあ。

あとbandcampでサウンドトラックも販売してます。



それでも世界が続くなら

この夏、職場の人たちと海へ出かけた。

何日かあとで、そのときの写真をもらった。

しまおうと思って、アルバムを整理した。


僕は自分の写っている写真が好きではない。

自分の写真写りが嫌いだから。
それに、そこには失くしたものばかりが写っているから。

だから、持っている写真はすごく少ない。

失くしたもの。

もらった写真をしまおうとして、まだ、もっていた写真があったことに気づいた。

失くしたもの。



それでも世界が続くなら 『シーソーと消えない歌』 PV


痛みや悲しみは人並みに感じてきたつもりだ。でも、不幸だと思ったことはない。

人生にはどうしようもないことがある。夢の終わりや、人間関係の終わり。

どうしようもないから、自分の中でつじつまを合わせて、生きていく。

生きにくいと思った。
でも現実はグロテスクなんだって、矛盾に満ちているんだって、
そのことを実感してから、それを受け入れてから、視界は明るくなった。

昔の友人に会うと、変わったねと言われる。
家族に言われることもある。昔の僕はどんなだったんだろうか。

失くしたものを悔やんでも仕方がない―

そう自分を納得させるには、ものすごく、エネルギーがいる。
でも、ウソも突き通せば、真実になるんだって、そう言い聞かせる。

かつてあったものが、今目の前にないことを悲しむより、
これから出会う何かに、思いを馳せる。

あのときから、僕はずっとそう思ってる。

今日も彼女は、僕の知らないところで、
泣いたり笑ったり、しているんだろう。

+ + + + + +

「それでも世界が続くなら」の歌はとてもグロテスクだ。心の深いところに、手を触れてくる。この曲はPVと一緒に聴くと、何倍も重みが増す(イメージが固定されてしまうという弊害はあるけれど)。何の気なしにPVを観ていた僕は、どうやらそっと心に触れられたようで、思わず泣いてしまった。

この9月に、彼らはメジャーデビューするようです。それについてフロントマンの篠塚くんが書いているメッセージがとてもいい。一部だけ抜粋させてください―

感謝し始めたら書ききれない。
でも、遅かれ早かれ、バンドなんて解散するからさ、そしたらジュースでもおごるよ。バイトするからおごらせてよ。
勝手に歌って、勝手に消えます。暇なときでいいから見ててくれたらうれしい。
効率なんて関係あるか、変わらず感謝したい全部に感謝して、許さないものは許さない。
言いたいこといって、好きな友達とバンド続けて、精一杯音楽やって、灰になります。

これで最後。
「音楽の為に生きてる」なんて言う人がいるけど、逆だろ。
お前が生きてるから、こっちは音楽つくってんだよバカ。

音楽の主役は、音楽作ってるやつじゃない。聴いてるやつだろ。お前だよ。
お前ら、どっかのダサいバンドがメジャーデビューなんてどうでもいいから、
なりたい自分になって燃え尽きろ、想像しろ、言え、諦めるのを諦めろ。
自分とかそんなんねーよ探すな。自分は音楽と同じで創るもんだろ、最後笑顔でちゃんと灰になれ。
あーもうなんかわけわかんなくてごめん。読んでくれてありがとう、長くてごめん。
それじゃ、またどこかのライブで。


終わりを見据えたその眼差しは、とても強くて、やさしい。

彼らの音楽をとても遠く感じる人もいるだろう。でもその逆もいる。

いつかきっと終わる。それは分かりきってる。
でも終わるなら、終わるから、自分であることに全力を尽くすのもよいんじゃないか。

世界のことなんてとても考えられなくて。
自分と自分の周りの、小さな世界の中でしか生きられない。
その関係性の中での、悲しみや苦しみを、彼らは唄う。
変な話だけど、そのパーソナルな世界観に、とても安心する。

悲しくても苦しくても。失くなっていくものばかりでも。
それでも世界が続くなら。

その中で生きていく。僕はきっとそうだ。

久しぶりに、終わりを見届けたいバンドに出会った気がします。




妹が作った痛い RPG「川越スチュワーデス物語」


妹が作った痛い RPG「川越スチュワーデス物語」 (via ZAKO2012


このシリーズ好きなんです。たまにすごく見たくなる。

でも最近更新されてないみたいで残念。

ちょいちょい出てくる川越ネタも好き。

DJみそしるとMCごはん - 「Mother’s Food」



ようやく、っていうほどでもないけど、買った! DJみそしるとMCごはんの「Mother’s Food」を! 買ってから知ったけどこれは数量限定なのですか! 3000枚限定ってホントですか! このパッケージはデラックスすぎる。ウルトラ特殊パッケージ。手作業なのコレ! ターンテーブルを模したジャケット。そこに、アナログ盤を意識した紙製のディスクがトラック分、ネジで固定されている。リスナーは今作を聴きながら、そのターンテーブルに各トラックに対応した皿を乗せ、ネジを外した部分に旗を立て、ゆっくりとくつろぐのだ(たぶん文面ではなんやら分からないと思うので、下に乗っけた今作の楽しみ方を紹介する動画でご確認ください)。粋だぜよ。

「マカロニグラタン」のMVでノックアウトされてからけっこう経ったなあ。料理のレシピをラップするっていう、この斬新なスタイルは、くいしんぼうHIPHOPと呼ばれている(自らもそう呼んでいるようだ)。レシピをラップするってのに、のっけの「スクランブルエッグ」から「歌なくたって作れるよねえ」って歌われていて、そのいきなりのメタな構造に笑ってしまいました。

チャイルディッシュでキュートでふわりとした音作りに、矢継ぎ早に言葉を繰り出していく、ある種の攻撃性を秘めたラップという表現スタイルが重なることで、温かいホットケーキの上に冷たいアイスを乗っけたような、ユニークな味わいを得ることができる。しかもリリックはユーモアを交えながらの料理レシピだったりするから、その味わいはさらに個性的になる。

いっとう好きなのはやはり「マカロニグラタン」です。このほっこり具合がたまらない。「マカマカマカ」ってところがなんか好き。「大学芋」の「うんとこしょーどっこいしょ」のサンプリングもたまらんですね。かわいい。

この佇まいをPOPといわずして何をPOPと言いましょう。あと、女の子だけの下宿でこんなのかけながら料理してたら素敵だなって、妄想したことは、ちょっと秘密です。


DJみそしるとMCごはん / マカロニグラタン


8月29日、焼き肉の日に公開された動画を見ると、冬にメジャーデビューのようです! 



DJみそしるとMCごはん 『DJみそしるとMCごはんより、焼き肉の日のご報告』


今作の楽しみ方は以下に。これまた面白い。メジャーにいっても、この遊び心は忘れないでくださいネ。



DMMGパッケージ仕様説明スライドショー

忘れていたこと

YouTubeのプレイリストを眺めていたら、忘れていたことを思い出した。


ココロト 『合言葉はさよなら』 PV

桜の花が大好きだったあの人を思い出す。





THE モールスシンゴーズ/アイロニー(2009)

ユラユラ。





Mechanero - Curtain Call

僕にはもう、なす術はない。そう思って腐った日もあったか。





Contrary Parade / ジュブナイル【PV】

まさにジュブナイル。力強く、甘酸っぱい。幼い君と僕の、輝く日々があったころ。



と、ここからAdvantage Lucyにつながるのが私の中の筋道なのだけれど、望む動画がなかった…。

そういえばアイコさん、お子さん生まれたんですよね。おめでとうございます。

こんな夜もあるか。あるね。ある。

忘れていたこと。

「うみべの女の子」



浅野いにおの「うみべの女の子」がいつの間にか完結していた。ひっそりとROMっている見知らぬ人のTwitterでそのことを知ってから、けっこう経った。久しぶりに気持ちに余裕があったので本屋に行ったら、購読している漫画が軒並み新刊を出していたので、ついでに「うみべの女の子」も手に入れた。そして読んだ。

考えてみればこの漫画には筋らしい筋がない。物語上のはじまりと終わりはもちろんあるんだけれど、ただ中学生の男女の心の機微が、延々とあるだけ。動機のわからない行動、クリアにならない心の内。なぜか分からないのに惹かれあう少年と少女。執拗なまでの身体の結びつき。

「してもしても足りない気がするのは、なんでだと思う?」

一瞬の間。

「興味ないね」

浴室で体を重ねながら交わされるこの会話が、この作品を象徴していると私は思っている。欠乏。渇望。何を欲しているのか自分でも分からない、あの感覚。何かを求めるあまり、ノーマルを外れて、いわゆるアブノーマルに踏み込んでみても、結局満たされない心。その欠乏感を、冷めた厭世的な態度でごまかしているのが磯辺であり(彼はものすごく淡々としてるけど、強い欠乏感を隠し持っていると思うし、彼の気持ちが希薄ではないことは、トラウマチックな描写に表れている)、逆にストレートに表に出しているのが小梅なのかもしれない。だから、あの二人は、求め合うレベルは一緒なのだ。けれど、後ろを向いている人間と、前を向いている人間が、顔を合わせることはない。そう、イメージは、背中合わせで、手だけをつないでいるような(ああ、syrup16gを思い出すな…)。だから手を離せば、手が離れれば、二人は、別々の道を歩き出すしかない。最終話の直前が、そのシーンだ。小梅は正面から向き合いたくて、ついに磯辺に告白する(正直このシーンがあるとは思わなかった)。だが磯辺はそれを断る。淡々と。こともなげに。泣きじゃくる小梅と、彼女のいないところで、ちょっとだけ泣く磯辺。そして離れる手―

もしかしたら、その段階で磯辺はもう渇望を感じていなかったのかもしれない。ちょっと短絡的な考えだけど、三崎へ暴力的な復讐を行うことによって、彼は兄の死という過去からの精神的脅迫を克服し、心の闇は晴れていたのかもしれない。だから、小梅と向き合えなかったのかもしれない。もう、満たされていたから(傷害事件を起こした自分を鑑みて、ということも、もちろんあるかもしれないけど)。ああ、そうだ。このシーンで、磯辺の髪はバッサリ短くなっているんだけど、この描写にもきっと意味がある。Amazonのレビューを拝読して初めて気づいた。「バンプの藤原が好き」という小梅の好みに合わせるように、磯辺の髪は、確かに最終話直前まで伸び続けていく。でも、それがここで切られているということは…。そういうこと、なのかもしれない。

でも最初は、磯辺が小梅に告白して、小梅が断ったところから、二人の関係がスタートしているんだよね…。はじまりは終わりに結びつき、そして終わりはまた、始まりへ―。最終話。小梅は高校生になっている。彼女が海辺でSDカードを探し、そこで中学生カップルを見かけるという描写。なるほど、これはそのまま、次の「うみべの女の子」に結びつくんですね(すみません。読んでない方には何を言っているか、分かりませんな)。うーん。さりげなく、深い。

+ + +

いい加減トラウマチックな描写はいらないんじゃないかなあって思っちゃうんだけど(笑)、でも私の好きな浅野いにおさんがいるような気がする(私は「おやすみプンプン」は途中から読んでないんです)。北野武監督の初期作品とか思い出す。透明感と、静けさと、それに相反するような、強い衝動性。

音楽を合わせるなら当然はっぴいえんどの「風をあつめて」なんだろう。小梅が磯辺の自殺を疑って、はっぴいえんどのアルバムと真剣なラブレターをもって、台風の中、磯辺の家に駆けつけるも、彼は不在。暴風雨の海辺をさまよい、結局出会えず、プレゼントと手紙はゴミ箱行きになるシーン。とても切ない。そして、いろいろと、自分と重なる。

ちょっと私事。話が逸れる。私が好きだった(今でも好きなのかは自分でも分からない)女性も、はっぴいえんどや、細野晴臣が好きなんだ。ひねくれた人。好きだといわれたのち、私が好きだと伝えたときは、敬遠された。拒否なのか、受容なのかもわからない態度。今でも顔を合わせる機会はある。連絡も取れる。でも、もう数年、その件についての話はしていない。

そういうことも関係あるのかもしれない。読後にとても、ホントにとても、憂鬱になった(褒め言葉ですよ)。死にたくなったっていうと大げさだけど。とても重い読み物だ。久しぶりに心が重くなった。モヤモヤが形をとって、そしてまた、モヤモヤに戻っていく。カバーに使われているこの抽象画は、上手いこと内容を象徴しているなと思う。淡い色遣いで、淡い輪郭の、モヤモヤ。暗いイメージも持った中で、つながれている二つの手。

ああ、自分としては、この作品に合う歌は何かって考えた。いろいろ考えたんだけど。現時点では松崎ナオさんの「あなたに向かって」にしておきます。1998年の「正直な人」収録。8cmシングルでも出てます。でも今もう廃番なんだね、コレ。もったいない。歌詞だけ載っけちゃうぜ! 聴きたい人は頑張って中古屋さんとか探してください!

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あなたに向かって 作詞 松崎ナオ/作曲、編曲 渡辺善太郎

調子はずれのうたうたってたら
夜が燃えてて 朝になっていた
今のボクには意味はないけど
真綿のようなキスを

引力には逆らえないから あなたの所に行くんでしょう?
いつも見てた知らないみずうみに 願いをかけに行こう
あなたがくれた船

ユララ ユララ 揺れてくれよう
ボクを乗せて 揺れてくれよう
心に咲く花を渡したくて
あなたに向かって

どうしてボクはあなたじゃないんだろう
なやんだこともあったのだけれど
今のボクには意味がないから
足の小指にキスを

とりとめのない想いから 溢れ出すしずくは
あなたがくれたもの

時を止めて 走ればいい
手と手には何もないけど
あなたと見た景色 探したくて
きっと 忘れない

ユララ ユララ 揺れてくれよう
ボクを乗せて 揺れてくれよう
風が見える場所で会えるのかなぁ
ほんとのあなたに

ユララ ユララ 揺れてくれよう
ボクを乗せて 揺れてくれよう
心に咲く花を渡したくて

あなたに向かって





五十嵐隆 生還によせて

2007年の12月9日。END ROLLと銘打ったツアーの最終日、NHKホールにて、syrup16gは解散宣言を行った。そこから数えれば、5年とちょっと。2013年の5月8日。syrup16gのフロントマンだった五十嵐隆は、同じNHKホールで、生還と称したライヴを行った。解散宣言をした、同じ舞台で。心憎い演出だ。でもドラマチックで、syrupもとい、五十嵐さんらしい。

正直、今回のライヴが始まってしばらくは、僕は否定的だった。1曲目が「Reborn」だったからだ。似てるギターフレーズだなあ、なんて思ったんだけど、どうも似てるだけじゃない。そのものだった。薄い幕の向こうでギターを弾く五十嵐さんは、たぶん黒い上下で、syrupのときと、その姿になんら違いは見られなかった。

始めは五十嵐さんにしかスポットライトが当たってなかった。だからドラムやベースの音もしているんだけど、誰が演奏しているんだか、分からなかった(正直いえば、ライトの灯りでできる影の動きで、なんとなく予測はできたけど)。「Reborn」が終わって、僕はここから新曲だろうな、なんて思ったんだけど、また違った。「Sonic Disorder」だった! 加えて幕が上がって、ステージ全体が照らされたとき、そこにいたリズム隊―ドラムとベースは、他でもないsyrup16g時代とまったく同じ、中畑大樹にキタダマキだった!

なんだこれ?って正直思った。syrupと同じメンバーでsyrupの曲演奏して、何が「生還」なんだろうって、大げさかもしれないけど、僕は憤ってしまった。同じことやるならなんで解散したんだよ?って思った。罰当たりだけど途中ムカついて拍手しなかったもんねオレ(ごめんなさい)。五十嵐さんはいつだって自分の今を歌に落とし込む人だったから、それが何年も前に解散したバンドの曲やるなんて、完全に懐メロじゃないかって、ガッカリした。何にも進んでない。同じ場所にいる。いや短期間とはいえど「犬が吠える」があったことをふまえれば、むしろ逆戻りしているように思えて、紆余曲折を経ても結局原点に返る、いや、しがみつくしかない、みたいな、ロックの呪縛みたいなヤツが、うらめしく感じられた(そのうらめしさはThe Smashing Pumpkinsが復活したときに感じたものと似ている)。

前半はsyrupの曲ばっかだった。挙げてみようか。Reborn, Sonic Disorder, 神のカルマ, I・N・M, 生活。曲自体はぜんぜん好きなんだけど、それがどういった位置づけでここに提示されているのかが全然分からなくて、頭の中は「?」でいっぱいだった。これが今の五十嵐さんにとってリアルなんだろうか?って。だとしたら、なんも(ホントになんも)変わってないの?って。

でも途中で気付いた。「赤いカラス」を唄い始めたときだ。犬が吠える時代に唄っていた曲だ。「ああそうか」と僕は思った。考えてみれば、syrupのときの曲だって、すべて五十嵐さんが作っていたわけだ。もちろん犬が吠えるのときも。だから、ちょっと強引な言い方かもしれないけど、それらは五十嵐隆の曲/歌でもあるわけだ。それを五十嵐隆の生還ライヴで演奏しているのだという、そんな図式が頭の中に突然浮き上がってきて、なるほどこれは、今回のライヴは、「五十嵐隆が作った歌たちの総括、総集編」なんだなと、合点がいったのだった(だからTwitterでさんざん言われているような「syrup16g生還ライヴだった」とは、僕は捉えない。そんな生還、望んでいないから、かもしれないけど)。

「赤いカラス」のあとには僕が聴いたことのない曲(これを便宜的に未発表曲と呼ぼう)を立て続けに披露していて、単なる懐メロ披露会という僕の失礼な思い込みを見事に払拭してくれた。未発表曲たちは、やはり歌詞が聞き取りづらいこともあってか、既発のものに比べると、どうしても入り込み切れなかったけれど、パフォーマンス自体はすばらしかった。五十嵐さんのギターだって、ブランクを感じさせないくらい滑らかだったし、それに歌声だって五十嵐隆以外の何物でもなくて、多少抜けきっていないところはあったけれど、声自体はすごくよく出ていた。そこに一番ビックリした。やっぱりやるときはやる人だ。まったく音楽から離れていた人のパフォーマンスだとは思えなくて、この数年何かしらの形で音楽に関わっていたのではないかと、勘ぐってしまった。

後半にまたsyrupの曲をやるんだけど、今度はすんなり聴けた。明日を落としても(これはハミングバードで弾き語り), センチメンタル, 月になって, 天才, 落堕, coup d'Etat~空をなくす。やっぱりかつてバンドメンバーだったリズム隊のおかげもあるんだろう、過去のsyrup時代のライヴと比べても何ら遜色ない、すばらしい演奏だった。単純な演奏を超えたケミストリーさえ発生していたかもしれない。

アンコールでは「パープルムカデ」に「リアル」をやってくれた。「リアル」はやっぱりカッコいい。曲の起伏、あるいは歌い手の表現にあわせるように柔軟に変化する、中畑さんのドラムがすごい活きる。とかあんまり感心してるとsyrupに逆戻りしちゃうんで、この辺で。

最後の最後、2回目のアンコールの時だ。Tシャツ姿で独りだけ出てきた五十嵐さん。「夢みたいだ」といった。「半年前までは、こんな機会がもてるとは思わなかった」と。そして「あんまり言わないんだけど」と前置きして、感謝の言葉を述べた。まず今日観に来てくれたお客さん、ダイマスさん(遠藤さんと言ってたけど)、若林さん(VINTAGE ROCK)、スタッフのみんな、そして今回参加してくれた二人のメンバーへ。二人に関しては「本当にいろいろな気持ちがあったと思うんですが―」と言っていた。それを聴いた瞬間に、やっぱり今回のライヴは単なるsyrupの再演とは違う意味があるのだなと、感じた。だって一度解散してるバンドのメンバー呼んでるんですよ? しかもおそらく解散の理由は音楽性云々じゃないところが大きくて、もはやバンドとして機能しなくなっていたというものが考えられるわけで。その「いろいろ」を飛び越えてね、かつて在籍したバンドのフロントマンの復活ライヴに、こうやって駆けつけて、しかも見事なパフォーマンスをやってのけるという、二人のハートに思いがおよんで、僕は感極まってしまった。

しかもその謝辞のあとにさ、「翌日って曲やるんですけど」と前ふりしておいて、「もう10年以上前、いや20年以上か、そのくらい前に作った曲だけど、あの曲には原型があるんですよ。みなさんが知ってる翌日の前の形が」と。「僕が中畑くんにチャリンコ漕いで聴かせに行ったやつですね」と、ファンの間では有名なエピソードを話し出す。「その原型にですね、歌詞だけ変えて、作ってきたんで、聴いてください」と言う。まさにsyrup16gがこれから始まるという時期の、思い出ともいえるエピソードを語るもんだから、今そのバンドはもういないという喪失感、でも元メンバーが何かフロントマンの復活ライヴに参加してるしで、そこにあるであろうさまざまな思いが僕の頭の中にうずまいて、ようやく最後に来て、僕の涙腺がゆるみはじめた。

エレキギター1本でスローに奏でられる「翌日プロトタイプ歌詞書き下ろしバージョン」は、だんぜんハイライトだ。最後に爆弾もってきやがって! うれしい悲鳴だぜ! この曲がどうやっておなじみの「翌日」に変わっていったのかは分からないが、これはこれですばらしい。でね、この曲は五十嵐さんがギター1本で唄ってるんだけど、途中から袖にはけていたリズム隊の二人がステージに入ってきてね、暗い中を(スポットライトは五十嵐さんだけだ)、ゆっくりと所定のポジションについていくんですよ。その光景がまたよくてね、頼もしいっていうか、いや違うか、もうバンドとして元に戻ることはおそらくないんだろうけど、でも、そこには、かつてあった何かがまだ存在しているように思えて、僕の感情はどんどん高まってきてしまった。五十嵐さんの口から「あなたの傷跡になりたかった」という必殺の歌詞フレーズが放たれたとき、僕はもう泣いていた(その言葉からよみがえるイメージが、いろいろとあるんです)。そして翌日へ―


一番気になるのは、これからシーンに復帰するのか否かという点だ。ライヴ中にも、終了後にも、特にアナウンスはされていない。リリース情報があるわけでもない。こんなところで上げた声が届くはずもないけれど、どうか早くメンバーを固めて(だってまだまだ五十嵐さんはバンドでやった方が良いと思うから)、レコーディングして、リリースして、ツアーやってください。絶対(そう、これは絶対だ)ついてくる人たちはいますから。今回は帰還のあいさつってことで、昔の曲もたくさんやってくれたんだと思ってます。これからがあるのであれば、syrup16gをやるんじゃなくて、新生した姿を見せてほしい。

現状ではまだ「おかえり」って言えないんですけど(だってまたどっか行っちゃうかもしれない)、でも、ありがとうございました。うれしかったです。あ、「赤いカラス」やるんだったら、「光」も聴きたかったなあ(笑)!


昔みたいに長ったらしいライヴレポートは書けないみたいだ。エネルギーが切れた。思い出したら付け足します。Twitterには書かねえよ。手軽すぎて嫌いだから(笑)。ここにたどりついたみなさんはえらい! 熱心にディグりましたね? では~


そして追記 : ライブにいった人と話しているうちに、疑問が出てきた。なぜ今でなければならなかったのか?というものだ。なぜこのタイミングで、二人の元メンバーを招いて、syrup16gの曲をわざわざ演ったのか? メンバーはどうあれ、全編新曲で、というやり方もあったはずだけれど、それ(全編新曲という構成でいけるだけの曲が出来上がること)を待たなかったのはなぜか? 新曲を披露したとはいえど、なぜあえて「ほぼsyrup16gの曲」という構成のライヴを、このタイミングで、しかもあの二人を呼んで、行ったのだろう。今後の見通しが立っている様子もないのに。今できることがあのライヴだったというのは分かるんだけど、なぜ「今」だったのかというのが、最大の疑問になってきた。もちろん自分で考えても答えは出ない。いつかどこかで語ってくれることを願っています。

また追記 : ネット上をさまよっていて気付く。自分よりも、より深く、的確に、今回のライヴに対する考えを綴っている人たちがいる(その中で、上の疑問に対するひとつの答えを見つけた。ここには書かないけど)。むしろ僕の気持ちを代弁してくれているように、感じられる文章もある。そう、きっとsyrup16gの曲をライヴでやってほしくなかったのは、僕の中で彼らがしっかりと終わりを迎えていたからだろう。僕の中では合点がいっていた。彼らは終わることによって救われたんだと、そう考えていた。これでよかったんだと。続きはもうないんだと。「終わった」んだと。だから、なぜ「終わった」のに、それを否定するようなことをするんだろうと、僕はそこにいくらかの未練や、優柔不断さ、不明瞭さを感じ、憤ったのかもしれない。とてもきれいに終わった物語に、意図のよく分からない後日譚が付け足されようとしている。必要ないのに。僕の中の大事な部分が、強引にねじまげられていくような、なんだか悔しさにも似た感覚があったことは、今でも覚えている。今思えば、あの気持ちは「チクショー」って気持ちだったのかも。「全部ぶちこわされた」って。しかも案の定、なぜ今回のライヴに至ったのか、そしてなぜこの形になったのかについての、説明はない。

・・・まあ、もともと秘められた部分の多いバンドだったし、だから憶測ばかりが増えるし、自然とこちらの憶測と都合だけで、いろいろなことを言ったり書いたりしてしまうのも事実。なので、もう一度やりたいって言われたら、そこにある事情はやっぱりよく分からないままになりそうだけど、拒否はできない。望んではいないけれど。

五十嵐さんが活動しない理由はよく分からない。憶測は飛び交うけれど。それは真実とは切り離されたまま、人々の間を飛んでいく。だから、「自信をもって曲を書いてくれ」なんていうのは、実は的外れかもしれない。だって自信は十分にあるかもしれないし。ただの怠惰から活動していないっていう可能性だって、あるじゃないか。だから自分の望みだけを書くと、変わっていくのは仕方がないことなので、とにかく曲を出してほしい。syrupと比べて甲乙つけたって仕方がないので、単純にこれはもう、五十嵐隆が作った曲として聴くから。そして、そこに自分にとっての何がしかの輝きを見つけ出すから。必ず。だから、曲を、歌を、聴かせてほしい。待ってます。

MEISHI SMILE - キッス KISS



MEISHI SMILEが突然ドロップしてきたトラック「キッス KISS BGM」がめちゃめちゃいい。ので思わず深夜に筆をとる。メインのブログであるUrban Guitar SAYONARAの方に書こうかと思ったが、分類が違うかと思い、こちらに書く。

恋愛シュミレーションゲーム「ときめきメモリアル」のヒロインである藤崎詩織をフィーチャーした、この動画と共にあってこそ、この曲はより強い感動を、私に与えてくれる(もちろんトラック自体がよいことはいうまでもない)。波打ち際や街路樹沿い、街中、夕暮れ空の下、さまざまな場所を彼女は、通り過ぎていく。でも彼女の隣には誰もいない。ひとりだ。彼女はときにさびしそうで、ときに楽しそうだ。独りなのに。そのことが私に何を感じさせるか。

かつて隣にいた「誰か」を思い出させるのだ。そしてその誰かが、今は私と関係のないところで、さびしくなったり、楽しくなったりしている。そんなアンタッチャブルな現実を私に感じさせるのだ。認識させるのだ。そこにあるのは、むなしさ以外の何物でもない。私の手を離れてしまった、けれど確かに存在している現実を思うのは、どこか空虚で、悲しい。ビデオの中に映るのが、フィクショナブルな世界に存在する女の子だからこその、むなしさ、なのかもしれない。私たちはしょせん生身の人間。電子の世界にある虚構に焦がれたところで、距離は埋まらないのだ。伸ばした指先は、何にも触れない。キラキラとしたElectronicな響きの、感傷的なメロディが、そんな思い―届かないというむなしさを、さらに助長する。このむなしさ、まるで生前のガールフレンドを収めたビデオを見ているようじゃないか。心をかき乱される。あきらめざるを得ないのに、そこにあるいくらかのトキメキが、私を悩ませる。

このトラックは彼の次の作品に入るのだろうか。すばらしいトラック。そして自らのトラックのイメージを見事に映像化してみせるこのセンス。すばらしい。ホント大好きですよ。

追記:オイオイ消されてるぜ!! 見たい人は探すんだ!

『KILLER IS DEAD』 第1弾PV



※このムービーには、一部、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております為、閲覧­は18歳以上の方に限定させていただきます。


角川ゲームス×グラスホッパー・マニファクチュア共同プロジェクト第2弾

―21世紀の大人たちに贈る愛と処刑(コロシ)のファンタジー―

殺し屋を処刑する処刑人モンド・ザッパ。
罪人の処刑はあくまで仕事、どんな任務でも怖れず、
真っ向から立ち向かう。
また、美女を甘い言葉で口説こうとするなど、ジゴロな一面も。
そんな危険過ぎる男を描く、"生と死と愛"の物語。
右手に刀、左手には換装武器。
いま、誰も見たことがない世界が、目の前に広がる!

【公式サイト】
 http://www.loveandkill.com/


むっちゃカッコいい。シルバー事件の頃から大好きだよ、GHM(グラスホッパー・マニファクチュア)。今私はゲーム機(ハード)持ってないんだけど、このためだけに買うってのもアリな気がしてきた。やりたい!

SCARLET - Addicted to Love



SCARLETの3年ぶりのアルバム、『Addicted to Love』を聴いている。もう10年選手だけど、わりと初期のころから好きで、『sheepsleep』からこっち、ほとんど聴いている。前作『REFLECTION』のツアーはちゃんと観に行ったし、最高傑作という言葉を贈らせてもらった。昔はカッチリした音作りで、ギターもリズムも尖がっていたんだけど、時を経るにつれて、彼らの音はどんどん丸みを帯びてきた。それが個人的には物足りなさに結びついていたし、そこを突破してエキサイティングなサウンドを取り戻しに来たような、前作が私はとても好きだった。

そして今作なんですが、これがまたよいんですよ! 何がって言われると困っちゃうんだけど、よし考えてみよう。よい感じに肩の力が抜けている、っていう表現が一番ふさわしいかもしれない。別にレイドバックしているとかじゃなくて、無理がないっていうんですかね。その気張ってない感じがすごく好ましい。花、みたいな。花って別に気張って咲かないでしょ(たぶん)。もちろん虫に花粉運んでもらわなきゃって、咲き誇るやつもいるんだろうけど、人間にはそこんとこ関係なくて、花なんて目に止める必要はない。でもやっぱり花は咲いてて。ふと見たら、その美しさに気付くときもあったりして。

佇まいとしてはインディーギターロック/ポップだから、癒しとかそんなんじゃないんだけど、はやり?の言葉を使うなら日常への「ちょい足し」をしてくれるような、そんな作品だ。なくても全然いける、つまり生活はできるんだけど、これがあることで、より生活が豊かになるというか。ベースの束紗嬢の作曲もだいぶ増えてきて、11曲中ほぼ半分は彼女の手によっている。ダンサブルなリズムを生かしたロックなポップやシンプルなギターポップサウンドが彼女が作る曲の特徴なら、ギターの橋本くんの作曲はアコースティックな響きが印象的だ。今作を静と動に分けるとしたら、意外にも動担当が束紗嬢で、静の担当が橋本君のようにも感じられる(この辺りは近年橋本君が行っている単独のアコースティック・ライヴも影響しているんだろう)。静~動へと流れ、そしてまた静へと返っていくような、アルバムの構成も素敵だ。物語のように盛り上がり、そして静かに幕を下ろす。そのコントラストが作品としてのまとまりを生んでいるっていうか、リスナーを飽きさせないようにしている。

昔からSCARLETってLOVEをテーマにしている部分があると思うんだけど、特に今作にあるそれは、決して激情の類ではなくて、もっとさりげない、日常的なものだ。けれど、深い。愛にもいろんな形があると思うんだけど、それをいろんなトラックの中でさりげなく鳴らし、歌という形にして届けてくれる。ギターもいつになく歌っている印象。作品全体にちょっとの悲しみを感じるのは、束紗嬢の歌声がそうさせるのか、けれど橋本君の特徴的な歌声が、その悲しみを融解させていくような、絶妙のバランス感覚。気が付けば、SCARLETはSCARLETでしかなくなっていた。もっと突き抜けているバンドなんていくらもいるんだろうけど、こんなフィーリングを持っているバンドは他にいない。

よい! 相変わらずうまく説明できなかったけれど。ひとつ言わせていただけるなら、ツインボーカル、もっと聴きたかったです! 冒頭の「melt away」とか、最後の「music」とか、すごく好きです。前作もだいぶ聴きましたが、今作もまたそうなるでしょう。ありがとうございます。また観に行きます。

ベーシスト林束紗氏がみずからアルバム全曲解説をしてくれています。≫ Addicted to Love勝手に全曲解説。





HEVEN'S PINHOLE


HEVEN'S PINHOLE【MUSIC VIDEO】

TVでフラッと流れたこの曲を聴いて、「オオやっぱりthe pillowsいいなあ!」と思ったら、さわおさんのソロだった。『Please Mr. Lostman』~『LITTLE BUSTERS』~『RUNNERS HIGH』以降、遠ざかっている私はファンとはいえないかもしれないけど、でもthe pillowsは素敵なバンドだと知っている。今バンドは休憩中だったんだねえ、これも知らんかった。確かにバンドが健康な状態だったら、ぜったいこれはthe pillowsでやるだろうなあと思います。よい曲。アルバムほしくなってきた。

君だけのキス


松岡恭子/君だけのキス(ソロ)

これもちょっと前からキになっている曲です。元エニクスパルプンテ、現ユナイテッドモンモンサンの曲。これはユーストリームの番組で特別に披露された、松岡恭子さんによるソロ・ヴァージョンなんだそうだ。この曲はちゃんとPVもあって、そちらはPop musicなコーティングがされたキュートとパンクが同居する、勢いのある仕上がりなんだけど、今の気分にはこちらがマッチする。あとライヴヴァージョンはさらにアグレッシヴ、パンクな感じになっていて、そちらもよいです。以下に。



ユナイテッドモンモンサン~君だけのキス



Heterotic — Xtal (Cover Version)


Heterotic — Xtal (Cover Version)

最近キになる曲シリーズということで。μ-Ziq(みゅーじっく)ことMike Paradinas(マイク・パラディナス)と、彼の奥方Lara Rix-Martinから成るユニットHETEROTICのトラック。2013年3月末に発売される彼らのアルバム『Love & Devotion』(レーベルはPlanet Mu)より。先行トラック。Aphex Twinのカヴァー! この曲、久しぶりに聴いたけどいいですね。

のび子ちゃん


pixivで公開されている「のび子ちゃん」という漫画がなんだか凄いですね。二次創作なんだけど、でも「ドラえもん」後の物語として、在りそうな気もする(いや、ないか)。シュールがやがて日常を侵食していくような、つげ義春のような、奇妙な味わい。物語がどこに進むのか、悟れる人は多くないでしょう(実際私も流れを読むことはできなかった)。思春期特有の強い焦燥感や葛藤がテーマになっていそうだけど、でもラブストーリーなんだと思います。エンターテイメントと文学の狭間のような。さわやかな読後が余韻を残す。

Bye-Product - .GIF (Official Music Video)


Jehm Recordsからリリースされている最新作「.GIF」より。アルバムはトゥー・マッチなボリュームでリピートできなかったんだけど、このトラックはすごい好きです。

http://www.jehmrecords.com/releases/jr010/

他にもたくさん作品だしてます。

http://music.mrhappyface.org/

[PV] Shortcake Collage Tape - あの世で待ってる



Canata Recordsからリリースされている「Spirited Summer」より。死とノスタルジアの間に漂うスウィートな思い出。たまらんな。

Shortcake Collage Tapeについて知らない方は、巨大な才能過ぎて紹介するのがおこがましいので、みなさんで調べてね!

http://fortracyhyde.blogspot.jp/

DO YOU REMEMBER LOVE?



MEISHI SMILEがバレンタインに届けてくれたミックステープは、彼がいかに日本のインディーズに通じているかを私に教えてくれた。HEARTFIELDとかART-SCHOOLとか入れてくるって、どんだけだよ。アメリカの日本インディー好きにはこのくらい当たり前なのか? ちょっと驚いた。ので記事に書いてみた。ART-SCHOOLとか流れの中でちょっと浮いている気がしないでもないんだけど、だってアニメがらみでもないし、エレクトロな響きもないころの曲「シャーロット」だし。いままで彼はミックステープで、ああいうオルタナ方向への興味みせてなかったから。私もあのころのART-SCHOOLすごく好きだから、すごくうれしい。なんかつられてミックステープ作りたくなってきたわ(結局やらないのが私だけど)。

そんなミックステープ「DO YOU REMEMBER LOVE?」はこちらからダウンロードできます。HEARTFIELDはすでにいないバンドだけど、その辺のポスト・スーパーカーよりも、はるかにスーパーカーなバンドだった。



泉まくら - 卒業と、それまでのうとうと



〈術ノ穴〉が送り出す新人アーティスト「泉まくら」。彼女のデビュー作「卒業と、それまでのうとうと」。オリジナル5曲とリミックス5曲。

Hip-Hop/Rapを下地にして、そこにPopなメロディラインを組み合わせたスタイル自体は珍しくない。完全なる処女作である「ムスカリ」こそ、本人が言うようにHip-Hop「ぽい」トラックだけれど、他は実にPopで、ちょっと驚いた。いたるところで紹介された「balloon」もそうだけれど、かなりPopの方向に接近している感覚があって、とても聴きやすい。ささやくような、どこか不安定で、けれど可愛らしい声もまた、耳を惹く。でもなにより力を持っているのは、そのリリックじゃなかろうか。

「卒業」という言葉に表れているように、この作品は、「終わること」と「始まること」への不安が充満している。それは多分に思春期的で、最たるものは「春に」だ。「明日目が覚めればネクタイの結び目の仕組みを知る/戸惑いの中 置いてきぼりの春が来る」、こんな言葉で描かれた「始まりへの不安」というやつを、私は知らない。でもそんな不安に立ち向かうように、最後は「でも明日目が覚めたらネクタイの結び目をほどき走る/戸惑いの中 置いてきぼりの春は来る」。

どこかで「愛を唄うのに愛という言葉を使ってどうする。それ以外の言葉で表現しろ」っていう意見を目にしたことがある。なんだかもう文学のようだ。曖昧なものを具体的な言葉で描く。現実という矛盾に言葉でもって論理を与え、筋を通す。その至難の業を、泉まくらは見事にやってのけている。さりげない情景描写から心の機微を描いて見せる。インタビューを読むと彼女は小説を書いてもいるようで、なるほどそれだからこその、このリリックなのかもしれない。そんな文学的表現とRap/Popの融合と、特徴的な歌声が合わされば、完成度が低いはずがない。よい。とてもよい。ベクトルはまったく違うんだけど、そのスタイル、佇まいには、レイトと非常に似たものを感じる(彼の次の一手はなかなか来ないけれど)。

それひとつで無限に世界を広げていける「言葉」というものは、やはり素敵だし、面白い(ときに面倒臭くもあるけれど)。そんな言葉の力というヤツを改めて思い知らされた。すばらしい作品です。前半5曲をじっくり噛みしめた後は、後半のリミックスでちょっと一息、ブレイクという聴き方が好き(解体と再構築というリミックスらしいリミックスなので、音を楽しむのが吉)。

このままでいてほしいような気もするけれど、新しい地平を切り開いてほしい気もする。応援してます。

購入は<術の穴>、他から。



【フル公開】 泉まくら 『春に』 pro.by 観音クリエイション



I often think in music.(2013.01.31)


The Crystal Method - Feat Filter - Can't You Trip Like I Do

昨日ラジオを聴いていて、ふと思い出した。この曲が流れたわけじゃないんだけど。今聴いてもカッコいいと思えるな。

この絡み(Industrial Pop/Rockというか)でいくと、Stabbing Westwardも好きだった。最後まで追いかけたわけじゃないんだけど、『Darkest Days』は特に好きだった。



Stabbing Westward - Save Yourself

世界観、完全にNine Inch Nails!

彼らがカヴァーしたNew Orderの「Bizarre Love Triangle」もまた、よいんですよ。



Stabbing westward - Bizarre Love Triangle

なんか色々紹介したくなってきたけど、続きはまた今度―


事件です(2013.01.31)

事件っても、丸刈りとか、そういうことじゃないです(私は応援してますけどね)

Meishi Smileの新作が!なんと!マルチネレコーズから出るらしい!
彼のFacebookでアナウンスされました。詳細はまた改めて、らしい。

これは事件だなあ。前作以上に羽ばたいちゃうなあ。
スゲエ。

好きなようにやるだけです(2013.01.15)



いきなりフリーゲームの紹介をしたりする、よく分からないブログになってきましたが、こっちのブログはこういうことをやるのが趣旨だったりするので、いいんです。よく分からないが、いいんです。

というわけで、ここ数日は半端マニアソフトさんの2003年作「冬は幻の鏡」をプレイしていた(そして原因不明の体調不良に苦しんだりも)。もともとは販売用の作品だったのだけれど、2010年からフリーで公開されている。

ストーリー(公式サイトより引用)はこうだ―

「真っ白な雪に包まれた世界にもし鏡が落ちていたとして、さわらずに、自分を写さずに、その鏡を見つけることができる?もし、できるならその方法をおしえて。たしかめたいことがあるの。

北海道の東側にある野別市の野別市立南陽高校では、四年前からある噂が流れていた。それは、四階の女子トイレに交通事故で死んだ留学生の幽霊が出るというものだった。留学生の幽霊、というのが珍しいと言えば珍しいが、どこの学校にもあるような噂の一つでしかない、とみんなが思っていた。

北海道の長い冬がやっと終わりに近づいた三月の終わり。冬の最後のあがきのように、朝から大粒の雪がゆっくりと降っていた日の放課後、御堂道明は廃屋を隠れ家にしている登校拒否児の長池小月の頭を撫でていた。和泉和歌奈は友人の立花鈴夫と一緒に幽霊を探しに夜の校舎に忍びこむ準備をしていた。田之上小太郎は風俗の割引チケットを持って風俗店「フェランス革命」の前に立っていた。それぞれが、これから出会うことを知らずに。

今は静かに眠っている虚ろな存在の浸食に、彼らはまだ気づいていない。ゆっくりと回転しながら沈んでいく、誰かの夢をまだ知らない。七人の主人公たちが織りなす、冬の終わりの、七つで一つの物語。」


スタイルはサウンドノベル(忘れちゃいけない、今作は18禁です)。プレーヤーは、とある冬の1週間(+α)を、複数の登場人物たちの視点で追っていく。物語の軸になっているのは「留学生の幽霊の噂」。噂が本当になり、事件が起きたとき、それぞれがそれぞれに、事件に立ち向かっていく。プレーヤーは、複数人の視点で事件を追うことで、はじめてこの事件が何だったのか、全貌をおぼろげにつかむことができる。メインルート3つをクリア後、最終ルートが始まるのだが、全ルートをプレイしないと、少なくとも事件の概要さえつかむことはできないだろう。

ここからはネタバレに踏み込みます。私はこの物語は葛藤の物語だと思っている。事件をきっかけに彼らがその葛藤を乗り越え、成長していく、成長譚だと思っている。登場人物たちは、本当に、どいつもこいつも、葛藤ばかりしている。童貞、愛、友情、欲望(殺人欲求、性衝動)、過去と現在、秘密。みながみな、心に強い何かを抱えていて、それゆえに、人間関係に苦しんでいる。

幽霊、というものへの関わり方も、各自で異なっていて、これが物語に幅を生み出している。登場人物のみながみな、われわれのような、いわゆる一般人―幽霊なんて見えない人―ではないのだ。見えるもの、見えるようになってしまったもの、狩るもの、生み出すもの、そして一般人と、複数の設定があり、この設定が物語に奥行きと複雑さを与えている。

こうして書くと、シリアス全開の物語に思われるかもしれないが、断じてそうではない。特に動けるデブである田之上小太郎のルートは(人を選ぶが)爆笑必至のコメディ、もとい下ネタ要素が満載(冗談抜きで満載だ)で、大いに楽しませてもらった。そもそも彼の所属する放送部では、横綱番付を採用していて、各自が番付をもっている。部長である彼はもちろん横綱で、だから放送部員たちは彼を「綱」、「横綱」と呼ぶのだ。この時点で何か面白いではないか。振り向きざまに女生徒に女性器の名前を叫んだり、語尾に「ティンコ」をつける冗談を伝授したり、彼のルートには数々の名シーンがある。面白さでいえば、放送部が制作した過去作品を見るというシーンがあるのだが、「校内残酷物語」、「人間高校」、「酔い」の3つが視聴可能で、いずれもエクストリームにぶっ飛んでいる。上半身裸で廊下を走り、女生徒の前で倒れながら血糊を口から吹き出し、「ぺ、ペスト…」なんて言っちゃうんだぜ? 面白すぎるだろ。冗談を通り越して芸術の域、には決して行かないし、アバンギャルドというよりも、意味不明。彼のルートだけで、このゲームがコメディとシリアスと変態的要素を内包しているのが分かる。

1週間のうちの6日目に、事件は一応の収束を見る。それぞれがその6日目に、「何か」を乗り越え、「何か」をつかむ。幽霊を狩るものとなった御堂道明は、幽霊である長池小月と生きるため、自らの影と対決し、これに勝利。愚直なまでに熱い田之上小太郎は、みんなニコニコハッピーエンドをあきらめず(道明と口論する場面は猛烈に熱い)に、それゆえに、愛を成就させる(このシーンも泣ける)。唯一、和泉和歌奈のルートだけは、初回プレイ時には謎が残るだろう。友人に重傷を負わせた幽霊を痛めつけようと、立花鈴夫と共に夜の学校に乗り込んだ彼女は、いったんは幽霊世界に取り込まれて、その世界で普通の生活を送り始めてしまう。辛くも脱出した彼女を、鈴夫が笑顔で迎えるのだが…? そう、事件の発端、留学生の幽霊はなぜ発生したのか、そして和歌奈の友人に重傷を負わせたのは誰、いや何なのかが、分からないまま、終わってしまう。それに学校の廊下に現れた仁科ゆうをさんざん切り刻んだのは、誰の仕業なのか?

最終ルートを仁科ゆうの目線でプレイすることで、その謎は解ける。他ルートのプレイ時、彼女のキャラクターはおとなしくて影があるけれど、実はよい娘(友達は一人もいないんだけど、根気強くつきあってみたら実は面白い娘みたいな)というイメージだったのだが、彼女自身のルートをプレイすると、内面は驚くほどひねくれているのが分かる。冷酷非道なマシーンのような。それもそのはず、彼女は人間ではなかったのだ。元人間で、狩るものであったのだが、諸事情で(と一言で片づけるにはあまりにも深い事情で)、幽霊となり、再び幽霊狩りを行っている。そんな彼女も人間だったころの記憶、過去に苛まれており、他の登場人物たちと関わるうちに、「本当の自分」が徐々に大きくなり、やがて隠せなくなってくる。仕事のために友人関係を偽り、それさえ利用しようと考えていた彼女が、最後には、友人を悲しませないために、禁忌を犯す。

事件の中心にいたのは、立花鈴夫だった。彼は幼いころから幽霊を見ることができ、また殺すこともできる、天然のゴーストバスターであり、さらには幽霊を生み出すこともできるという、たぐいまれな能力の持ち主だった。仁科ゆうやその主人である三原のような、裏社会の組織には属しておらず、あくまで一般人として生きてきた。彼もまたそんな能力を持つ自分に強く葛藤し、素直に和歌奈の愛情を受け止めることができないでいた。彼の生み出す幽霊は特殊だ。もはや幽霊ではなく、空間を操る能力といってよいだろう。一度倒れたはずの留学生の幽霊が、何回も同じ場所に出現したのは、鈴夫の力のせいだった。「幽霊が見える力」の特殊性に長い間苦しんできた彼は、「みんなが幽霊を見える」、今回の事件が続けばよいと、願ったのだ。そうすれば自分だけが幽霊を見えるという、疎外感、孤独感に苦しまずに済むから。その結果、留学生の幽霊の出現スポットは、延々と同じ時間を繰りかえす、異常な空間となってしまった。何度も同じ幽霊が現れるのは、空間がリピートしているせいだったのだ。和歌奈の友人が大けがをしたのは、そのリピートの瞬間に起きる、空間の収縮に巻き込まれたせいだったのだ。

仁科ゆうが属する組織においては、鈴夫のような存在(幽霊を見ることができ、また作り出すこともできる存在)は処分するのが決まりだった。一般人にとって非常に危険な存在だからだ。そうでなくとも、和歌奈の復讐を手助けするのなら、その矛先は元凶である鈴夫に向けねばならない。そういった論理だろう、ゆうは深夜の学校で鈴夫と和歌奈と対峙し、鈴夫を殺しにかかる。そして致命傷を与えた矢先、和歌奈に懇願されるのだ、「やめてくれ」と。「どうして?」とゆうは問う。和歌奈はかけがえのない友人だ。ゆうの中で本当の自分が大きくなってきたのも、和歌奈の存在があればこそだろう。「和歌奈ちゃんは復讐したいんでしょ?だからやってあげてるの」とゆうは話すが、和歌奈は「そんなのもう関係ない」と泣きながら、息も絶え絶えな鈴夫を抱きかかえる。その瞬間だ、和歌奈は鈴夫の作りだした空間(幽霊)に飲み込まれて、意識をなくす。その空間は和歌奈を愛する鈴夫が、和歌奈のために用意した世界。どこまでも和歌奈に固執する鈴夫は、ひとつの世界すら作り上げてしまった。現実世界となんら変わりのない、もうひとつの世界で、和歌奈は鈴夫と楽しく生きるのだ。

けれど死が近いせいか、鈴夫自身が、その世界からはじかれて、現実世界に戻ってきてしまう。目の前には仁科ゆうの顔。和歌奈を悲しませたくないという部分で意見が一致した二人は、ある決断をする。その決断だけはここには書きません。気になる人はプレイして確かめてください。私はハッピーエンドじゃないと思うなあ。でもエピローグは好きだな。終わりと始まりの空気がすごいあって。仁科ゆうは、そりゃもうひどい奴だけど、やっぱりなんだかんだ言って誰かのことを思いやってるし、かわいいから許す。

どぎついエログロ描写もね、人を選ぶでしょう。凌辱的なシーンも少なくない。グラフィックはそうキつくもないけれど。でもエロ目線ではプレイしない方がいいでしょう。そういうゲームではない気がする。あと行動につじつまをあわせるためか、論理の飛躍をときどき感じますが、まあそれも些末な事柄ですかね。思春期特有の、バカやってるんだけど、何かに必死になってて、大人の階段上ってる的な、あのきらめきが封じ込められている。多くの人が言っているけれど、田之上小太郎がいいな、やっぱり。一般人てところも馴染みやすさの一因かもしれないけれど、彼の面白さと男らしさ(すげえビビッてても結局みんなのために頑張っちゃう)は、勇気をくれる。何の事件も起こらなくてもいい。小太郎の日常だけを延々と読み物にしてほしいくらいだ。

ぜんぜんこのゲームの魅力を書ききれてないんですが、まあこんなところで。プレイすれば分かるさ。あとグラフィックをコンプリートすると、本編では未登場の放送部先輩方(鉄パイプ先輩、大野先輩、そして偉大なる新田先輩)のお顔を拝むことができます。余裕のある方は是非。

数々の名セリフのある作品ですが、印象的だったのは「この事件を仕切るのは、放送部横綱!田之上小太郎!」ですかね。客観的には全然仕切ってないんですが(笑)。でも私の中では今作を仕切ってる。かっこいい。



I often think in music. (2013.01.05)


The Smashing Pumpkins - Tonight, Tonight


「tonight」という言葉に、ときめきやロマン(ダサくいえば青春のようなキラキラ)を感じるのは、きっとスマパンのせいだと、勝手に思っている。グラミー賞にノミネートされたというFun.の「We Are Young」を聴いていて、ふとそう思った。



Fun. We Are Young (official video)



Strike me dead! (2013.01.04)


Crystal Castles - "Magic Spells" - Official Video


it's a commercial...


I often think in music. (2013.01.04)


Letting up Despite Great Faults - "Our Younger Noise"


私は祭りのあとにある感覚が好きだ。

喧噪の終わり。卒業式のような、清々しさと、さびしさと。

物語の終わり。映画や小説や漫画のエピローグ。

すべての物事には終わりがある。必ず。

だから始まりがある。

目が覚めたら一人でも、そこからまた始まる―


from Tumblr (2013.01.04)


(from WarauRyuScrapbook originally from 4gifs

お、お前、馬だろ? 車奪うって。しかもどこ行ってんだよっていう。
突っ込みどころ満載のひとコマ。シュールだぜ。大好きだ。

謎すぎる。だが惹かれる。そんなGIF画像がふいに流れてくる。
Tumblrは止められない。




やっぱり好きなミュージシャン (2013.01.01)


ミドリカワ書房「君は僕のものだった」

「みんなのうた」シリーズが終了してから、ちょっと遠ざかってしまった。昔は「増刊ミドリカワ」とか観に行ってたんだけどなあ。インストアライヴで握手もしたな。なつかしいな。

いつのまにかミドシンは丸坊主になり、ふと俳優の村上淳さんみたいに見えてきたり。月日の流れは、はやいものだ。

アルバム全曲のMVを付録DVDとして付けたり、曲の導入になるナレーション(茂木淳一さんや劇団ひとりさんが担当した)を各曲の頭に挿入したり、いろいろ面白いことやってきた人だけど、やっぱり私が惹かれたのは、曲の力なんだろうな。この曲を聴いて、ミドシンの曲の力を再確認した。

ブラックという言葉が、適格かどうか分からないけれど、ポップな曲に乗せて物語調のエグい歌詞を唄うのがミドシンの主なスタイルだ(もちろんピースな曲もたくさんある)。ばあちゃんをひき逃げするカップルだったり、子殺しだったり、死刑囚から母への手紙だったり、ストーカーだったり。ときにそれはメジャーから退けられたりもするんだけど、それはもうミドシンの性なんだろう。そう思う。

で、この曲は、初め聴いていると、なんてストレートな失恋ソングだろう、ミドシンもこんなの歌うんだなあ、よい曲だなあって思ったんだけど、最後まで聴くとやっぱり裏切らない(笑)。安定した軌道のハズしっぷりに思わず笑ってしまった。すばらしい! やっぱり好きです。ちなみにですが、「馬鹿兄弟」も名曲だ。是非映像と共に見てほしい。



ミドリカワ書房 - 馬鹿兄弟



シルバー事件 オープニング


シルバー事件 オープニング

このゲームには相当入れ込んだ。開発元のグラスホッパー・マニファクチュアから出たサントラはリミックスも含めてすべて手に入れたし、Tシャツも購入した。複雑なストーリーなので、それをまとめたページもネット上に持っていたくらいだ。続編の「シルバー事件25区」(これは携帯電話用のアプリとして配信された)もまとめる予定だったのだが、私の諸事情により中途で終わってしまったことが、悔やまれる。

とにかく強烈なインパクトを残したゲームで、こんなに風変わりでありながら、スマートでクールな画面構成には、このあとお目にかかったことがない。近未来の日本で繰り広げられる、とある事件を軸にした、複雑怪奇なストーリーも、発売時の1999年にあった世紀末感にマッチしていて、非常に魅力的だった。

というか、また、やりたくなってきたな。25区の方、どうにかプレイできるようにしてくれないだろうか。

探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに OPENING


探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに OPENING

私は第一作「新宿中央公園殺人事件」から第7作「灯火(ともしび)が消えぬ間に」までしかプレイしていないんだけど、その中ではこの作品がもっともよかった。傑作といってよいでしょう。エンディングで我知らず、涙を流していたことを、今でも覚えている。特に謎解きに重きを置いているゲームではないのですが、それでもあそこまで引き込むのはさすが、世界観の完成度の賜物だろう。

プレイする機会がある方は、是非。


最近キになる曲 (2013.01.01)


【MV】泉まくら 『balloon』 pro.by nagaco

画を見てピンとくる人はいるでしょう。ビデオのディレクションは大島智子さんが手がけている。私の大好きなMeishi Smileの「LUST」のジャケットも、彼女が担当している。

ささやくように、さびしげに、紡がれる言葉たち。「あの娘の毎日がやけにドラマチックに/見えだしてから急に笑えなくなったの」。日常のささやかな感情の機微を切り取った少女漫画、あるいは邦画のような、染みわたる余韻がたまらない。直接的な感情表現を行わずに、あくまでも描写の中から、心を浮かび上がらせるその在り方。しかも、ポップなのだ。買う。この曲が収録されたアルバムは、『卒業と、それまでのうとうと』。


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DJみそしるとMCごはん - マカロニグラタン

名前からくるイメージを裏切らない、くいしんぼうHIPHOP。料理のレシピをラップするというまさかのスタイル。アコースティックなほっこり具合は、日曜日の台所。作る人がいて、食べる人がいて、それでハッピー。しかもポップ。これはもう、「みんなのうた」なんかでかかってもおかしくない、ピースな空気。ヤバイ。買いたい。彼らの作品「Mother's Food」は、今のところOtotoyからしか買えないらしいですよ! 興味深いインタビューはこちら。≫ 料理レシピをラップする小さな巨人 DJみそしるとMCごはん


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Her Ghost FriendはShinobu OnoとDJ Obakeの二人ユニット。まあ詳しくは各自で調べていただくとして、こんなにキュートでフワフワな女性ボーカルを私は聴いたことがないです。声の表情も豊かですげえかわいい。しかも嫌みがない。キラキラでピコピコなサウンドもさることながら、彼らに対するポップなイメージは、この声で決定づけられている部分が大きいだろう。「フォーエヴァーネヴァーモア」のキュートすぎるラップの中毒性たるや。クセになる。気になるインタビューはこちら




やっぱり名盤 (2013.01.01)

Last Days of Aprilの「Angel Youth」。しばらく聴いていなかったんだけど、最近聴きなおす機会があった。そしたらもう、初めて聴いたときと大差ないくらい、引き込まれてしまって。改めて書くのも憚られるんだけど、これは名盤だ(たぶんこのアルバムの曲はライヴでは再現しにくいんだろう、私が見たときにはちょっと違和感があったことを今でも覚えている)。

珠玉という言葉がこれほど似合うアルバムも、そうそうない。M-1~5までは非の打ちどころがない。100点満点を、私は点ける。

メンバーが固定的でないところも関係したのか、これ以降どんどんサウンドはレイドバックした調子になっていって、ポップ・ミュージックに接近していくんだけど、私はここ「Angel Youth」から次作「Ascend to the Stars」あたりが一番好き。永遠のマスターピース。もう10年以上も前の作品とは思えない。


Last Days Of April - Will The Violins Be Playing?



Last Days Of April - All will break(「Ascend to the Stars」収録)