SCARLET - Addicted to Love



SCARLETの3年ぶりのアルバム、『Addicted to Love』を聴いている。もう10年選手だけど、わりと初期のころから好きで、『sheepsleep』からこっち、ほとんど聴いている。前作『REFLECTION』のツアーはちゃんと観に行ったし、最高傑作という言葉を贈らせてもらった。昔はカッチリした音作りで、ギターもリズムも尖がっていたんだけど、時を経るにつれて、彼らの音はどんどん丸みを帯びてきた。それが個人的には物足りなさに結びついていたし、そこを突破してエキサイティングなサウンドを取り戻しに来たような、前作が私はとても好きだった。

そして今作なんですが、これがまたよいんですよ! 何がって言われると困っちゃうんだけど、よし考えてみよう。よい感じに肩の力が抜けている、っていう表現が一番ふさわしいかもしれない。別にレイドバックしているとかじゃなくて、無理がないっていうんですかね。その気張ってない感じがすごく好ましい。花、みたいな。花って別に気張って咲かないでしょ(たぶん)。もちろん虫に花粉運んでもらわなきゃって、咲き誇るやつもいるんだろうけど、人間にはそこんとこ関係なくて、花なんて目に止める必要はない。でもやっぱり花は咲いてて。ふと見たら、その美しさに気付くときもあったりして。

佇まいとしてはインディーギターロック/ポップだから、癒しとかそんなんじゃないんだけど、はやり?の言葉を使うなら日常への「ちょい足し」をしてくれるような、そんな作品だ。なくても全然いける、つまり生活はできるんだけど、これがあることで、より生活が豊かになるというか。ベースの束紗嬢の作曲もだいぶ増えてきて、11曲中ほぼ半分は彼女の手によっている。ダンサブルなリズムを生かしたロックなポップやシンプルなギターポップサウンドが彼女が作る曲の特徴なら、ギターの橋本くんの作曲はアコースティックな響きが印象的だ。今作を静と動に分けるとしたら、意外にも動担当が束紗嬢で、静の担当が橋本君のようにも感じられる(この辺りは近年橋本君が行っている単独のアコースティック・ライヴも影響しているんだろう)。静~動へと流れ、そしてまた静へと返っていくような、アルバムの構成も素敵だ。物語のように盛り上がり、そして静かに幕を下ろす。そのコントラストが作品としてのまとまりを生んでいるっていうか、リスナーを飽きさせないようにしている。

昔からSCARLETってLOVEをテーマにしている部分があると思うんだけど、特に今作にあるそれは、決して激情の類ではなくて、もっとさりげない、日常的なものだ。けれど、深い。愛にもいろんな形があると思うんだけど、それをいろんなトラックの中でさりげなく鳴らし、歌という形にして届けてくれる。ギターもいつになく歌っている印象。作品全体にちょっとの悲しみを感じるのは、束紗嬢の歌声がそうさせるのか、けれど橋本君の特徴的な歌声が、その悲しみを融解させていくような、絶妙のバランス感覚。気が付けば、SCARLETはSCARLETでしかなくなっていた。もっと突き抜けているバンドなんていくらもいるんだろうけど、こんなフィーリングを持っているバンドは他にいない。

よい! 相変わらずうまく説明できなかったけれど。ひとつ言わせていただけるなら、ツインボーカル、もっと聴きたかったです! 冒頭の「melt away」とか、最後の「music」とか、すごく好きです。前作もだいぶ聴きましたが、今作もまたそうなるでしょう。ありがとうございます。また観に行きます。

ベーシスト林束紗氏がみずからアルバム全曲解説をしてくれています。≫ Addicted to Love勝手に全曲解説。





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